強制執行ができる(債務名義になる)調停条項の内容と文言!

離婚調停の成立時に作成する調停調書には、調停で夫婦が合意した内容を調停条項として記載します。

調停条項は、簡単に言うと「離婚する夫婦の約束事」を文章化したものです。

「調停条項で財産分与や養育費などを取り決めておけば、約束が守られなかった場合に強制執行ができる。」と思っている人がいますが、強制執行の手続きが利用できるか否かは調停条項の種類や記載内容によります。

調停条項の種類

離婚調停で取り決めることができる調停条項は、給付条項、確認条項、形成条項、任意条項、道義条項、清算条項の6種類あります。

6種類の調停条項はそれぞれ性質が異なりますが、強制執行手続きが利用できるか否かによって分類すると、以下のとおりとなります。

調停条項の種類強制執行の可否
給付条項
確認条項
形成条項
任意条項
道義条項
清算条項

以下、各調停条項の内容と強制執行を利用できる文言を確認していきます。

強制執行ができる調停条項1:給付条項

給付条項とは、夫婦の一方がもう一方に対して、金銭や土地家屋などの特定の物を給付する合意に関する調停条項です。

例えば、「申立人は、相手方に対し、解決金として100万円を支払う。」という調停条項が給付条項です。

夫婦間で特定の物を引き渡す旨の合意が形成された場合、夫婦の一方は、合意した物を相手に引き渡す義務を負います。

このとき、引渡しの義務を負う夫婦の一方から相手へ特定の物を引き渡す行為が給付です。

給付条項の文言の例

  • 相手方は、上記記載の長男及び長女の養育費として、(中略)支払う。
  • 申立人は、申立人は、相手方に対し、本件離婚に伴う財産分与として、○○万円を支払うこととし、(中略)支払う。
  • 相手方は、申立人に対し、本件離婚に伴う慰謝料として○○万円の支払義務があることを認め、(中略)支払う。
  • 申立人は、相手方に対し、解決金として○○万円を支払う。

※(中略)部分には、支払期限や振込先情報などが入ります。

強制執行の債務名義となる給付条項の記載内容

強制執行手続きを利用するには、給付条項が債務名義とならなければなりません。

具体的には、給付意思、給付内容、給付対象を明らかにしなければなりません。

給付意思(給付文言)特定の物を給付する意思を示す文言

◯:「支払う」、「引き渡す」、「明け渡す」など

✕:「支払うものとする」、「引き渡すものとする」、「明け渡すものとする」など

給付内容誰が誰にどのような給付をすべきか(給付をすべきでないか)を特定

例:「申立人が、相手方に対し、解決金として(以下略)」など

給付対象何を給付すべきか(給付対象)を特定

例:「100万円を支払うこととし」など

強制執行ができる調停条項2:確認条項

確認条項とは、法律関係の存在(または不存在)や特定の権利が存在することを確認する合意に関する調停条項です。

離婚調停では、慰謝料などの金銭については給付条項で取り決めることが多く、確認条項を定めることは稀です。

確認条項の文言の例

  • 申立人と相手方は、別紙物件目録記載の不動産について、解決金の支払いにかかわらず、相手方が所有権を有することを相互に確認する。
  • 申立人と相手方は、申立人と相手方との間に、親子関係が存在することを確認する。

強制執行の債務名義となる確認条項の記載内容

確認条項を債務名義として強制執行手続きを行うには、対象を特定する必要があります。

例えば、「別紙物件目録記載の不動産について」、「申立人と相手方との間に」などと対象を特定しなければなりません。

強制執行ができる調停条項3:形成条項

形成条項とは、新たな権利の発生・変更・消滅の効果を生じる合意に関する調停条項です。

例えば、夫婦が離婚することは形成条項として調停調書に記載します。

形成条項として取り決めることができるのは、夫婦が自由に処分することができる権利または法律関係に限られます。

つまり、夫婦が任意に処分できない権利について形成条項を定めることは認められません。

例えば、住宅ローンの債務者を変更することを夫婦で合意したとして、その旨を形成条項で定めることはできません。

住宅ローンは、債権者である金融機関などとの契約であり、夫婦間でどのような合意をしても債権者には一切影響を及ぼすことはないため、形成条項は定められないのです。

形成条項の文言の例

申立人と相手方は、本日、調停離婚する。

強制執行ができない調停条項1:任意条項

任意条項とは、条項化しなくても法的に効果が生じる内容、または、法律上の効力には関係がない調停条項です。

例えば、調停条項の最後に、調停費用は各自の負担とすると記載することがあります。

調停費用は、原則として、夫婦が自分で支出したものを自分で負担することが法律で規定されているため、夫婦が調停費用を争点としていなければ記載する必要がない内容ですが、手続きの透明性を確保する目的で記載されています。

任意条項の文言の例

調停費用は、各自の負担とする。

強制執行ができない調停条項2:道義条項

道義条項とは、夫婦の一方または両方の道義的責任を認める合意に関する調停条項です。

例えば、円満調停において、夫婦が互いに協力して円満な家庭を築く努力をする約束をして、それを調停条項とする場合は道義条項となります。

強制執行を行うことはできませんが、道義条項を定めることにより夫婦が納得または満足し、夫婦間の紛争を事実上ではあれ抑止する効果が期待されています。

なお、道義条項は、任意条項の1つとしてまとめて説明されることもあります。

道義条項の文言の例

1 申立人及び相手方は、今後、互いに協力し合って円満な家庭を築くよう努力する。2 相手方は、申立人に対し、次のことを約束する。

  1. 飲酒及び喫煙を控える。
  2. 家事育児に協力する。
  3. 帰宅が遅くなる場合、事前に申立人に連絡する。

強制執行ができない調停条項3:清算条項

清算条項とは、離婚後に元夫婦間の紛争が再発することを防止するために定める調停条項です。

調停条項の1つとして清算条項を入れて離婚調停が成立すると、夫婦がお互いに相手の債務を免除することに合意した、つまり、お互いに相手に対する請求権を放棄したことになります。

引用:離婚ハンドブック

調停条項に清算条項を入れると、離婚後に慰謝料や財産分与などを請求する権利を夫婦が互いに放棄したことになるため、離婚後の紛争再発を防止することができます。

一方で、離婚後に慰謝料などの解決を持ち越したいと希望する場合、清算条項を入れずにおくか、除外する旨の文言を加えることになります。

清算条項の文言の例

  • 当事者双方は、本件に関し、本調停条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認し、今後、名義のいかんを問わず、互いに金銭その他一切の請求をしない。

離婚調停と強制執行

離婚調停が成立した後、調停調書に記載された給付条項、確認条項、形成条項の内容が守られない場合、権利者は強制執行の手続きを利用することができます。

強制執行の主な流れは、以下のとおりです。

  1. 事前準備(執行文の付与、債務名義の送達証明申請)
  2. 強制執行の申立て
  3. 差し押さえ命令(差押えの場合)
  4. 取立て

強制執行の手続きは手間と時間がかかるため、まずは、家庭裁判所の履行勧告を申し出て任意の履行を促してもらい、効果がない場合に強制執行を検討するのが一般的です。

養育費の強制執行については、関連記事で詳細に解説しています。

関連記事

養育費の強制執行手続きの流れと費用は?給与債権差押えの特例とは?

>>>「調停離婚」の記事一覧に戻る

【参考】

  • 夫婦関係調停条項作成マニュアル―文例・判例と執行までの実務|小磯治著|民事法研究会
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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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