統合失調症と離婚!統合失調症の夫や妻と離婚したい場合の離婚理由!

統合失調症 離婚

配偶者が統合失調症を発症したことで、夫婦のコミュニケーションが阻害されて精神的なつながりが失われ、離婚したいと考える人は少なからずいます。

しかし、統合失調症によって離婚の判断ができなくなった配偶者と離婚する場合、精神疾患がない配偶者との離婚にはないハードルを超えなければなりません。

統合失調症とは

統合失調症とは、脳機能が障害されることで精神機能のネットワークがうまく働かなくなり、精神病症状、機能低下、認知機能低下などの症状が現れた状態です。

人は、脳内の精神機能のネットワークの働きにより、喜怒哀楽などの様々な感情を抱いたり物事を考えたりしており、また、感情や思考に基づいて行動しています。

しかし、何らかの原因で脳機能が障害されて精神機能のネットワークが調子を崩すと、感情や思考をまとめることができなくなり、行動にもまとまりがなくなります。

こうした感情や思考をまとめる(統合する)機能が失調し(一時的に調子を崩し)、行動にも異常が見られる状態が統合失調症です。

統合失調症の患者数

統合失調症の患者数は、厚生労働省が公表している「平成26年(2014年)患者調査の概況」で確認することができます。

統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
総患者数(推計) 773,000人
入院治療中 165,800人
外来治療中 69,700人

出典:平成26年(2014年)患者調査の概況|厚生労働省

なお、統合失調症は、思春期から青年期にかけて発症しやすい病気で、発症率は100~120人に1人程度だといわれています。

統合失調症の原因

統合失調症の原因は、現時点では解明されていません。

他の精神疾患と同じく、発症しやすい素質と限界値を超えるストレスが組み合わさることで精神疾患を発症するという「ストレス・脆弱性モデル」に基づいて説明されるのが一般的です。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は、陽性症状(精神病症状)、陰性症状(機能低下)、認知機能障害に分類されます。

陽性症状(精神病症状)

陽性症状とは、統合失調症の代表的な症状であり、幻覚や妄想など現実にはないものを認知したり、自我や思考が障害されたりする症状です。

例えば、以下のような症状が見られます。

症状 具体例
幻覚
  • 幻聴:存在しない声(自分に対する悪口や良くない噂、命令など)が聞こえる
  • 幻視:存在しない人や物が見える
  • 幻味:存在しないものの味を感じる
  • 幻嗅:存在しないもののにおいを感じる
妄想
  • 常に誰かに監視されている
  • 他人に悪口を言われている
  • 他人にだまされている
  • 関係妄想(本人と無関係の刺激を自分に関係があると思い込む妄想)
  • 誇大妄想(自分の能力や境遇を過大評価したり、想像を事実だと思い込んだりする妄想)
自我意識の障害 自分と外界の境界がぼやけて周囲の刺激の影響を受けやすくなり、自分の思考や行動が他人にコントロールされていると感じる

  • させられ思考(他人の思考を吹き込まれた、自分の思考が他人に知られた、考えを他人に奪われると感じるなど)
  • させられ体験(他人に操られているように感じる)
思考障害 思考にまとまりがなくなる

  • 脈絡なく話が飛ぶ
  • つじつまが合わない話をする
  • 急に思考が中断されて言葉が出なくなる
異常行動
  • 緊張病症候群(興奮して叫んだり暴れたりする、周囲の刺激に反応しない)
  • 衒奇症(演技がかった挨拶、奇妙な身振り)
  • カタレプシー(他人にとらされた姿勢を維持し、崩そうとしない)
  • 常同症(無意味な運動や発言を繰り返す)

いずれの症状が現れるかは、障害された脳の部位によります。

陰性症状(機能低下)

陰性症状とは、思考の低下、気力や意欲の減衰、感情の鈍麻や平板化などの症状です。

通常は、陽性症状に続けて以下のような症状が現れます。

症状 具体例
感情鈍麻・平板化
  • 喜怒哀楽などの感情表現が乏しくなる
  • 表情がなくなる
  • 他人と視線を合わせなくなる
意欲や気力の低下
  • 目的を持った行動を始めにくくなる
  • 始めた行動を中断する
  • 周囲への興味関心が乏しくなる
  • 集中力が低下する
思考の低下
  • 会話が乏しくなる
  • 返事がとぎれとぎれになる
  • 他人の話しかけに答えることができなくなる
コミュニケーションの異常
  • 他人との接触を避けて引きこもる
  • 常にぼんやりして過ごす

認知機能障害

認知機能障害とは、認知機能(記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断など)が障害されることです。

認知機能は、人が社会生活を送る上で欠かせない機能であり、障害されることで日常生活に大きな影響が及びます。

例えば、外界から取り入れた情報と保持された記憶を適切に照合できず、配偶者を他人だと思い込むことがあります。

また、料理の手順が分からなくなったり、整理整頓ができなくなったり、情報の取捨選択ができなくなったりして、家事育児や仕事に支障をきたす人もいます。

統合失調症と離婚

統合失調症を発症した夫または妻と離婚する方法は、発症した配偶者が離婚を判断する能力(意思能力)があるか否かで異なります。

統合失調症の配偶者に離婚を判断する能力がある場合

統合失調症を発症した配偶者に意思能力がある場合、精神疾患がない場合と同じ方法で離婚することができます。

協議離婚

まず、夫婦で離婚やそれに伴う以下の諸条件について協議し、夫婦間で合意ができれば協議離婚します。

  • 子どもの親権
  • 養育費
  • 面会交流
  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 年金分割

配偶者が統合失調症と診断されていても、離婚を判断できる能力が残っていることが客観的に明らかな場合は、特別な対応は必要ありません。

なお、協議離婚した場合、他の離婚方法と比較して、離婚時に取り決めた約束が離婚後に履行されない割合が高いため、公正証書で離婚協議書を作成しておくようにします。

調停離婚

夫婦の協議では離婚の合意ができない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて離婚を目指します。

配偶者が統合失調症の診断を受けていることが調停で取り上げられた場合、調停委員に加えて家庭裁判所の医務室技官(医師)や家庭裁判所調査官が調停に参加し、必要に応じて配偶者の状態を確認したり、調停の進行を援助したりされます。

配偶者に意思能力があることが明らかであれば、精神疾患がない場合と同じように調停が進行しますが、「意思能力に問題がある」または「意思能力がない」と裁判所が判断した場合、調停が打ち切られることがあります。

離婚などの身分行為には意思能力が必要であるため、夫婦の一方の意思能力に問題があると、調停を継続することができなくなるのです。

また、身分行為の代理は原則として認められておらず、代理人を立てることもできません。

なお、夫婦が離婚に合意して条件面の調整を求めても、調停委員から「夫婦関係をやり直し、統合失調症の配偶者を支えるべきではないか。」などと的外れな助言をされることがあります。

基本的には無視して問題はありませんが、調停委員の心証を悪くすると調停進行に支障が出ることがあります。

そのため、統合失調症の配偶者との婚姻生活の継続が困難であることを調停委員に納得させる説明を考えておくことが重要です。

裁判離婚

夫婦の協議や離婚調停で離婚の合意がまとまらなかった場合、離婚訴訟を提起して裁判所に離婚の判断を委ねることになります。

統合失調症の配偶者に意思能力がある場合、精神疾患がない場合と同じように手続きを進めることができます。

ただし、離婚調停と同じく、配偶者の意思能力に問題があると裁判所が判断した場合、成年後見制度を利用して配偶者に後見人を選任し、後見人に配偶者の代わりとして手続きを行わせるよう促されます。

離婚訴訟は、後見人が選任されるまで手続きが中断します。

統合失調症の配偶者に離婚を判断する能力がない場合

統合失調症の配偶者に離婚を判断する能力がないことが明らかな場合、夫婦の合意が必要な協議離婚や調停離婚はできず、離婚裁判を目指すことになります。

しかし、配偶者自身は自ら訴訟手続きを行うことができないため、成年後見制度を利用して配偶者に後見人を選任し、手続きを代理させる必要があります。

成年後見制度とは、統合失調症や認知症など精神上の障害により物事を判断する能力が不十分な人について、その権利や財産を保護する後見人を選任することで法律的に支援する制度です。

成年後見制度には、「すでに判断能力が低下した人を支援する」ための法定後見制度と、「判断能力が低下した場合に備える」ための任意後見制度の2つがあります。

種類 内容
法定後見制度 すでに判断能力が低下した人に対して、家庭裁判所が後見人などを選任し、その財産管理や法律行為を代わりに行うことで財産や権利を守る制度

判断能力低下の度合いにより、後見制度、保佐制度、補助制度に分類され、それぞれ成年後見人(保佐人、補助人)に付与される権限が異なる

任意後見制度 判断能力が低下した場合に備えて本人と援助者が「任意後見契約」を結び、実際に判断能力が低下した場合に契約に応じた援助を受ける制度

家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで契約が発効し、援助者が任意後見人として本人を援助する

統合失調症の配偶者はすでに判断能力が低下した状態であるため、法定後見制度を利用することになります。

後見、保佐、補助のいずれの類型を利用するかについては、配偶者の判断能力に応じて判断します。

注意したいのは、類型によって後見人などに付与される権限が異なることです。

家庭裁判所の職員に事情を説明し、離婚訴訟を代わりに行う権限が後見人などに付与される手続きを選んでください。

成年後見人に包括的な代理権が付与される後見類型(事件名は「後見開始の審判」)を選択すれば間違いありませんが、配偶者の判断能力の程度によっては他の類型を申し立てるよう、裁判所から求められることがあります。

成年後見制度については、関連記事(外部リンク)で詳しく解説されています。

関連記事(外部リンク)

成年後見制度とは?わかりやすい説明と図で解説

離婚訴訟(離婚裁判)で統合失調症を主張する方法

離婚訴訟で離婚するには、婚姻関係破たんの原因となった法定離婚事由が存在することを主張・立証し、裁判所に認定してもらう必要があります。

民法770条第1項では、5つの離婚事由が定められています。

夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(民法第770条第1項)

配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないとき

統合失調症の配偶者と訴訟で離婚することを目指す場合、多くの人がまず考えるのが、配偶者の強度の精神病を離婚事由として主張する方法です。

しかし、強度の精神病を理由として離婚するには、非常に高いハードルを超えなければなりません。

「強度の精神病」とは

強度の精神病とは、精神病の影響で夫婦間の協力・扶助義務を果たせなくなり、夫婦が精神的なつながりが失われて夫婦関係を継続することが困難になる程度の精神病です。

例えば、統合失調症の影響により、「存在しない相手と日常的に会話している」、「付け狙われているなどの妄想が顕著に見られる」、「会話が成立しなくなる」などの症状が見られ、長年にわたって夫婦間のコミュニケーションが不可能になっている場合などです。

「回復の見込みがないとき」とは

回復の見込みがないときとは、強度の精神病について、裁判所が離婚を判断する時点で「治療による回復が見込めない」という意味です。

例えば、統合失調症の症状が進行し、医師が治療の施しようがないと判断した場合には、裁判所が「回復の見込みがない」と判断する可能性があります。

しかし、統合失調症は、必ずしも回復の見込みがない精神病ではありません。

医学の進歩によって治療法や治療薬が開発されていますし、障害された部位によって現れる症状や程度も個人差が大きく、治療によって回復するケースもあります。

また、回復と再発を繰り返している場合、一旦は回復していることから「回復の見込みがないとき」とは認められにくいものです。

過去の判例で示された基準

過去の判例において、強度の精神病による離婚が認められる基準として示されているのは、以下のようなものです。

  • 婚姻相手が、夫婦の協力・扶助義務を果たせなくなるくらい重度の精神病を発症している
  • 精神病により、夫婦としての精神的なつながりがなくなっている
  • 精神病が回復する見込みがない
  • 精神病の治療が長期間に及び、離婚を主張する人が献身的に看病を続けてきたことが認められる
  • 離婚後の看病や治療費など、精神病を発症した人の今後の生活の見通しがついている

※最高裁昭和33年年7月25日判決、最高裁昭和45年11月24日判決を参考に離婚ハンドブック編集部がまとめたもの

引用:離婚ハンドブック

法律上、夫婦には協力・扶助義務が課せられており、たとえ夫婦の一方が強度の精神病によって義務を果たせなくなったとしても、もう一方の義務が免除されるわけではありません。

そのため、配偶者の強度の精神病を立証するだけでなく、離婚後の配偶者の生活保障まで具体的に示さないと、強度の精神病を離婚事由とした離婚は認められないのです。

その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

以上のとおり、「強度の精神病」を理由として離婚を認める判断を得ることは難しいというのが現状です。

そのため、統合失調症の配偶者と離婚訴訟で離婚する場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という離婚事由によって離婚を目指すのが一般的です。

過去の判例(最高裁昭和33年年7月25日判決)では、「強度の精神病」による離婚請求を棄却した上で、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまるとして離婚を認める判断を示しています。

統合失調症の配偶者との離婚と弁護士

統合失調症の配偶者と離婚訴訟を争う場合、弁護士を依頼するか否か検討することになります。

しかし、「訴訟だから」、「配偶者が弁護士を雇った(後見人に弁護士が選任された)から」などの理由で安易に弁護士を雇うのは危険です。

「強度の精神病」を主張しようとする

強度の精神病を主張して裁判離婚することが狭き門であることは、既に解説したとおりです。

しかし、「強度の精神病」を理由として離婚訴訟を起こす弁護士が少なからずいます。

その他の離婚事由も含めて主張する場合は問題ありませんが、強度の精神病だけ(または主な理由として)を主張し、離婚が認められず終了するケースも散見されます。

弁護士への依頼を検討する場合は、相談段階で「法定離婚事由としては何を主張すれば良いですか。」と質問し、弁護士の考えを確認しておくことが大切です。

「弁護士に任せておけば大丈夫だろう。」と考えて安易に依頼したツケは、「望んだ結果が得られず、高額な弁護士費用だけが残った。」という形で返ってきます。

統合失調症の理解が十分ではない

統合失調症は「分かりにくい病気」です。

統合失調症に関する正しい知識を持っているのは、精神科系の医師や心理職など限られた専門職のみだと言っても過言ではなく、「弁護士だから統合失調症のことも詳しいだろう。」というのは誤解です。

また、書籍を読み込めば一定程度の知識を得ることはできますが、経験まで得ることはできません。

そのため、統合失調症の配偶者と離婚したいという依頼者の気持ちを真に理解できず、依頼者が離婚を決めるに至った婚姻生活の苦しさやストレスなどを訴訟の場で十分表現しきれない可能性があります。

弁護士への依頼を検討する場合は、「弁護士が私見を挟まず親身になって主張を聞き、うまくまとめることができるか。」、「統合失調症の知識を有しているか(または知識を得る意欲があるか)」を確認してください。

【参考】

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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