成年後見人とは?なれる人の資格、報酬・費用と仕事内容は?

成年後見人

うつ病などの精神上の障害が原因で判断能力が低下して自ら離婚の判断ができない配偶者と離婚する場合、夫婦間の話し合いや調停による話し合いで離婚することはできず、離婚訴訟を提起する必要があります。

しかし、判断能力の低下した配偶者を被告として手続きを進めることはできないため、先に成年後見制度を利用して配偶者に後見人を選任し、後見人を被告として訴訟を起こすことになります。

離婚のために成年後見制度を利用する場合、後見開始の審判を申し立てることが多いため、以下、同審判によって選任される成年後見人について解説します。

成年後見人とは

成年後見人とは、家庭裁判所の「後見開始の審判」によって後見が開始された本人の財産や権利を保護するために、家庭裁判所に選任される後見人です。

包括的な代理権を付与され、本人の財産管理や身上監護に関する法律行為を一手に引き受けます。

後見人の名称

成年後見制度のうち法定後見制度には3つの類型があり、類型によって選任される後見人と本人の名称が異なります。

類型後見人本人
後見成年後見人成年被後見人
保佐保佐人被保佐人
補助補助人被補助人

後見類型のみ「成年」とされているのは、未成年後見と区別するためです。

未成年後見については、別の記事で詳しく解説しています。

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未成年後見人とは?後見人になれる人、親権者がいると申立てできない?

後見人になれる人の資格

後見開始の審判では、申立人が成年後見人候補者を挙げることができます。

申立書に記載するか、面接(事情聴取)段階で担当者に伝える方法があり、申立人自身や適切と判断した親族などを候補者にするのが一般的です。

しかし、すでに書いたとおり成年後見人の選任は家庭裁判所の職権事項であり、候補者が必ず選任されるとは限りません。

家庭裁判所は、審理の結果、本人保護の観点から最も適切と判断した人を成年後見人に選任するため、候補者を含む親族ではなく、弁護士、司法書士、税理士、社会福祉士などの専門職を選任するケースも多くなっています。

家庭裁判所が候補者以外を選任するのは、「候補者に法律上の欠格事由がある場合」と「欠格事由はないがその他の問題がある場合」の2つです。

候補者に法律上の欠格事由がある

法律上の欠格事由は、民法第847条に規定されています。

次に掲げる者は、後見人となることができない。

  1. 未成年者
  2. 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
  3. 破産者
  4. 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
  5. 行方の知れない者

(民法第847条)

成年後見人は、包括的な代理権という大きな権限を付与され、本人の財産管理や身上監護を一手に引き受ける重要な仕事であるため、判断能力が未熟な人や自身の経済状況に問題がある人、本人との関係性に問題がある人は選任されません。

当然ですが、行方が分からない人も成年後見人になることはできません。

欠格事由はないがその他の問題がある

欠格事由がなくても、以下のいずれかに当てはまる場合は候補者以外が選任される可能性が高まります。

  • 親族が後見開始の審判をすることに反対している
  • 親族が候補者を成年後見人にすることに反対している
  • 親族と候補者の関係性が悪い
  • 本人の財産(流動資産)が多い(おおむね1000万円以上)
  • 本人の収支の変動が大きく、定期的に収支を確認しなければならない
  • 審理段階で本人の財産の全容が不明
  • 候補者の財産管理能力に不安がある
  • 申立ての理由が重大な法律行為(生命保険金の受領、預貯金の解約、不動産の売買など)である
  • 本人と候補者との間で利益相反が生じる可能性がある(遺産分割協議など)
  • 本人と候補者との間に多額の金銭の貸し借りがある
  • 本人と候補者の家計が同一である
  • 本人と候補者が疎遠である
  • 候補者が、本人の財産を、自分や親族のために使用したいと希望している
  • 候補者が、本人の財産を投機的に運用したいと希望している
  • 候補者が高齢である(おおむね60歳以上)
  • 候補者の健康状態が悪く、後見事務を適切に行うことができるか不安がある
  • 候補者が多忙で、成年事務を適切に行うことができるか不安がある
  • 候補者以外の人が後見事務を行う予定がある

後見人になれる人

以上のとおり、家庭裁判所は候補者に欠格事由や問題があると判断した場合に、候補者以外を成年後見人に選任します。

成年後見人になるための特別な資格などはなく、欠格事由などがなければ候補者が選任されます。

なお、候補者が弁護士などの第三者であった場合も、申立人の息がかかっている可能性がある場合、家庭裁判所が別の専門職を選任することがあります。

取下げの制限

家庭裁判所の審理の中で、担当する職員から、誰を成年後見人等に選任するかについての見通しを伝えられることがあります。

しかし、成年後見の申立ての取下げには、家庭裁判所の許可が必要になっているため、仮に候補者以外の人が選任される可能性が高いとしても、それを理由として申立てを取り下げることはできません。

取下げを希望することはできますが、家庭裁判所が認める可能性は高くはありません。

候補者以外が成年後見人等に選任された場合

候補者以外が成年後見人等に選任された場合、家庭裁判所の判断に不服を申し立てる方法はありません。

また、審判後に申立てをなかったことにすることもできません。

成年後見人の選任

成年後見人の仕事が始まるのは、後見開始の審判で選任された後です。

後見開始の審判の流れ

家庭裁判所は、後見開始の審判の申立てがあると、必要書類や費用が揃っていることを確認した上で受理し、以下の流れで事件を審理して審判を出します。

  1. 申立ての受理
  2. 申立人、成年後見人候補者の面接/事情聴取
  3. 本人調査
  4. 親族照会(事情によっては親族調査)
  5. 鑑定(診断書などから本人の状態が明らかな場合は省略されることがある)
  6. 審判

審判で判断が示されるのは「本人に後見を開始するか」と「誰を成年後見人に選任するか」の2つです。

審判後の流れ

審判後、家庭裁判所から本人と成年後見人に対して審判書が郵送されてきます。

審判書で審判の結果を確認し、「本人に後見を開始するか」について審判結果が納得できない場合、申立人や利害関係人(本人とその配偶者、4親等内の親族)が不服を申し立てることができます。

一方で、「誰を成年後見人に選任するか」については家庭裁判所の職権事項であり、候補者以外が選任されることも多いですが、不服申し立てはできません。

成年後見人に審判書が届いてから2週間が経過すると、審判が確定します。

この時点で成年後見人として働き始めることができますが、金融機関との取引きや各種契約などを行うには、成年後見登記の完了を待たなければなりません。

重要な取引や契約を行う際に登記事項証明書の提出を求められることが多いからです。

成年後見登記

審判確定後、裁判所書記官が東京法務局へ審判内容の登記を依頼(嘱託)し、約2週間(成年後見人に審判書が届いた時点からは約1ヶ月)で登記が完了します。

登記完了後は、成年後見人などが法務局に請求することにより、登記事項証明書が発行されるようになります。

登記事項証明とは、後見登記された事項を証明する書類で、成年後見人が本人を代理して法律行為を行う権限があることを証明するために必要です。

離婚訴訟の被告となる場合も、登記事項証明書を家庭裁判所に提出することになります。

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後見開始の審判の申立てから審判まで:申立書書式と必要書類、費用は?

成年後見人の仕事

成年後見人の仕事は、財産管理と身上監護の2つに大別することができます。

また、仕事内容について定期的に家庭裁判所に報告することが義務付けられています。

財産管理

財産管理とは、本人の財産を適切に管理する後見事務です。

現金や預貯金だけでなく、不動産、有価証券、ビットコイン、FXなど多岐にわたることもありますが、その全てを把握し、収入と支出、納税なども行わなければなりません。

成年後見人に求められるのは、本人が死亡するまで安定した生活を送るための資金を確保するため、安全な方法で本人の財産を管理することです。

そのため、原則として投機的な運用は認められず、元本が保証された方法で財産を管理することが求められます。

本人の財産から支出できるのは、本人の生活費、施設費用、本人の借金返済にかかる費用、本人が扶養義務を負う配偶者や子どもの生活費、後見事務にかかる経費(成年後見人の報酬を含む)などです。

本人の親族や友人の冠婚葬祭に関する費用、孫へのお年玉など制度利用前から本人が行っていた支出は、家庭裁判所の許可した範囲内であれば本人の財産から支出することができます。

本人に不利な条件で財産を処分したり、成年後見人などへ贈与または貸付けをしたりするなど、本人の利益に反する行為は禁止されており、悪質な場合は成年後見人を解任され、刑罰に問われることもあります。

身上監護

身上監護とは、本人の生活に必要な法律行為を代理することです。

例えば、医療サービス契約、介護サービス契約、施設入所契約などの締結が身上監護に当たります。

「本人の身の回りの世話」も含まれると思われがちですが、成年後見人の職務は本人の身上に関する法律行為を行うことであり、身の回りの世話は含まれていません。

ただし、親族が成年後見人に選任された場合、事実上、成年後見人が身の回りの世話を行っているケースも多いものです。

家庭裁判所への報告

成年後見人には、以下のタイミングで後見事務の内容を家庭裁判所へ報告する義務が課せられています。

  • 成年後見人に選任されてから1ヶ月以内(後見事務開始時の報告)
  • 家庭裁判所の後見監督(原則1年ごと、事情によってはより短期間で報告を求められることもある)
  • 重要な法律行為を行った場合(居住用不動産の処分、遺産分割、多額の預貯金の引き出しなど)
  • 不正が疑われた場合

成年後見人の報酬・費用

成年後見人の報酬は、「報酬付与の審判」の申立てを受理した家庭裁判所が、本人の財産や後見事務の内容などを踏まえて金額を決定し、本人の財産から支払われます。

成年後見人の報酬は基本報酬と付加報酬の合算で算出されます。

なお、原則として、成年後見人の報酬が支払われるのは専門職後見人の場合であり、以下、専門職後見人の報酬の相場について解説します。

親族後見人でも報酬付与が認められることがありますが、専門職後見人よりも金額が安くなる傾向があります。

基本報酬

基本報酬とは、成年後見人が通常の後見事務を適切に行った場合に支払われる報酬です。

本人の財産が多いほど管理に手間と時間がかかると考えられており、原則として、財産が多いほど基本報酬も加算されます。

本人の財産総額基本報酬(月額)
1000万円以下2万円
1000~5000万円3~4万円
5000万円以上5~6万円

成年後見監督人(成年後見人による後見事務を監督するために、家庭裁判所が選任する)が選任されている場合、監督人にも報酬が発生します。

本人の財産額報酬(月額)
5000万円以下1~2万円
5000万円以上2~3万円

いずれも目安であり、後見事務の内容や本人の財産などによって変動するものです。

また、成年後見人が複数選任されている場合は、事務分担の程度に応じて報酬が按分されます。

付加報酬

付加報酬とは、通常の後見事務に加えて困難な事務を遂行した場合に支払われる報酬です。

原則として、基本報酬額の50%を超えない範囲で家庭裁判所が決めた金額が支払われるため、月額の目安は設定されていません。

付加報酬が付与される後見事務としては、以下のようなものを挙げることができます。

  • 本人の生活費を捻出するために、本人の不動産を適正価格で売却した
  • 本人が加害者の事件で示談を成立させた
  • 本人が被害者の事故で保険金の支払いを請求して支払いを受けた
  • 収益不動産の管理や処分を行った
  • 遺産分割協議により、適正な遺産を本人に取得させた
  • 離婚訴訟の被告となり、妥当な条件で離婚を成立させた
  • 本人の財産を横領した前成年後見人を訴え、損賠賠償金を支払わせた

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【参考】

幼児教育・保育の無償化
離婚調停
シングルマザー

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