セックスレスで離婚したい!夫婦の営みなしで離婚&慰謝料を請求する方法を解説

    最終更新日: 2019.10.20

セックスレスを理由に離婚したいと希望する夫婦、ここ数年で急増しています。

私が相談や依頼を受けたケースだけ見ても5年前の2~3倍に増えており、同じ事務所の弁護士のケースも含めるとさらに数が増えます。

性に関する離婚原因としては「不貞行為(浮気・不倫)がありますが、セックスレスは、不貞行為のように法律上の規定がなく、定義が曖昧で証明も難しいので、単体で離婚や慰謝料を主張するのは難しいというのが実情です。

セックスレスを主な理由として離婚を希望するなら、証拠資料の収集など事前準備をしておくことが大切になります。

この記事では、セックスレスを理由に離婚や慰謝料を請求する方法について、分かりやすく解説しています。

セックスレスとは

セックスレスとは、病気や障害などの原因がないにも関わらず、夫婦間で性交渉や性的関係がほとんどない状態のことです。

セックスレスの夫婦のことは、レス夫婦、セックスレス夫婦、セックスレスカップルと呼びます。

法律上の結婚をすると、結婚相手以外とセックスしないという「貞操義務」が課されますが、夫婦でセックスする義務が課されることはありません。

したがって、夫婦の両方がセックスレスを受け入れていれば、夫婦関係に問題が生じることはありません。

例えば、夫婦の両方に性的欲求がない場合や、加齢によって性交渉が自然になくなった場合などは、セックスレスが離婚の原因となることはないでしょう。

しかし、夫婦の一方が性交渉を望んでいるのに、もう一方が消極的または拒否する場合、セックスレスが夫婦関係悪化の原因になります。

その結果、夫婦の一方または両方が、セックスレス、または、セックスを求められることへの苦痛から離婚を希望することがあります。

セックスレスが離婚と結びつく理由

どうして、セックスレスから離婚問題に発展するのでしょうか。

性的欲求が満たされない

性欲は、人にとって食欲や睡眠欲などと同程度に重要な欲求です。

食欲や睡眠欲などと違い、性欲を我慢しても死ぬことはありませんが、満たされないままだと徐々にストレスが蓄積します。

セックスすれば解消するのに配偶者が応じてくれないという状況なので、配偶者への苛立ちが募り、心の距離が離れてしまいやすいと言われています。

不倫に結びつきやすい

人の心と身体は互いにリンクしています。

そのため、セックスレスによって身体の距離が離れると、心の距離も離れていきます。

多くの人は、誰かと精神的に繋がりたいと考えているので、夫婦間で繋がりが得られないと他人と繋がりを求めるようになります。

分かりやすいのが不貞(浮気)です。

夫婦関係で「満たされない」、「寂しい」と感じているときに他人から優しくされると、頭ではダメだと分かっていても、身体が誘惑に乗ってしまう可能性が高くなります。

実際のところ、「配偶者に性交渉を拒まれるようになった後に不貞をした」という人は男でも女でも多いものです。

当然、不貞は社会通念上許されることではなく、通常は自制心が働くものですが、セックスレス夫婦の場合は、性交渉のある夫婦よりも自制心が弱まる傾向があると言われています。

不貞は、夫婦の信頼関係を根幹から裏切る行為なので、離婚に直結することが少なくありません。

セックスレスの原因

セックスレスの原因は一人ひとり異なりますが、一般的な原因を確認しておきましょう。

セックスレスの原因
  • 相手と関係がマンネリ化し、性的欲求を感じなくなった
  • 仕事や家事育児で疲れている
  • 同居する両親への気兼ね
  • 長い別居生活で男女の関係を意識できなくなった
  • 出産に立ち会った後、妻を女性として見られなくなった
  • 精力の減退
  • 不妊
  • 性的欲求の解消はマスターベーションで足りるようになった

通常は、複数の原因が複雑に絡み合うことでセックスレスになっており、「セックスレスの原因は何か」と質問されても、明確に応えることはできません。

セックスは、お互いの愛情を確かめ合うために大切な行為で、夫婦の関係性を良好に保つための大切な要素の一つです。

その分、非常にデリケートで、性交渉を望んで無下に拒絶された経験や、姓交渉中のため息や気のない返事、理由の分からない中断、生理中の性交渉の強要などの配偶者の態度が原因で、性交渉への意欲が減退してしまう人もいます。

自分に原因がある場合も…

通常、セックスレスに不満を持つ人は、「セックスしてくれなくなった」と配偶者を避難しがちです。

しかし実は、自分の言動や態度が原因で配偶者がセックスに応じなくなったというケースも一定数あります。

例えば、短小や早漏をバカにした、体形が崩れてきたことを指摘した、「自分でする方が気持ち良い」と言ったなどが原因で、セックスレスに陥っているケースがあるのです。

そのため、セックスレスになったら、まずは自分の言動や態度を振り返り、身に覚えがあれば素直に謝るところがスタートです。

これを避けて配偶者を避難してしまうと、ますますレスになってしまいます。

セックスレスで離婚を希望する夫婦の数

司法統計では、婚姻関係事件の申立て動機別の事件件数を確認することができます。

申立ての動機申立人
性格が合わない11,030件18,846件
異性関係2,547件7,987件
暴力を振るう1,500件10,311件
酒を飲み過ぎる435件2,964件
性的不調和2,316件3,500件
浪費する2,218件5,000件
病気705件890件
総数17,918件47,807件

※婚姻関係事件とは、夫婦関係調整(離婚・円満)、同居協力扶助、婚姻費用分担事件をまとめたものです。

※申立ての動機は、申立人が挙げた主な動機3個までが集計されています。

出典:裁判所|平成29年度司法統計年報|婚姻関係事件数―申立て動機別

家庭裁判所の事件の申立て動機に限定した数値ですが、離婚動機の大まかな傾向を把握することができると考え、掲載しています。

セックスレスに相当する申立て動機は「性的不調和」です。

性的不調和は、夫の申立て動機の第3位、妻の申立て動機の第5位で、全てがセックスレスではないとしても、一定数はセックスレスを理由に離婚を主張していると考えられます。

また、申立て動機総数に占める性的不調和の割合(夫:19.2%、妻:7.3%)から、妻よりも夫の方が性的不調和を理由に離婚を希望する傾向があることが分かります。

セックスレスで離婚する方法

セックスレスを理由に離婚する方法は、離婚の方法によって異なります。

協議離婚

協議離婚とは、夫婦間に離婚の合意があり、市区町村役場で離婚届が受理されることで成立する離婚です。

協議離婚の場合、理由が何であれ夫婦間で離婚の合意ができれば、離婚することができます。

セックスレスが離婚を希望する主な原因だとしても、配偶者が離婚に合意すれば離婚できるのです。

調停離婚(審判離婚)

調停離婚とは、家庭裁判所の調停を利用して夫婦で離婚について協議して離婚する方法です。

調停離婚の場合も、どのような理由であっても夫婦の合意があれば調停が成立し、離婚することができます。

また、離婚やその条件について夫婦間で大筋の合意ができたにも関わらず、夫婦の一方が調停に出頭できない場合や、些細な条件で折り合わない場合などには、家庭裁判所が審判で離婚を決定することがあります(審判離婚)。

審判離婚は、調停における夫婦の合意内容に基づいて離婚の決定を出すので、離婚原因がセックスレスであっても夫婦の合意があれば離婚が認められます。

裁判離婚

裁判離婚とは、家庭裁判所の離婚訴訟を利用して離婚する方法です。

裁判離婚には、認諾離婚、和解離婚、判決離婚の3種類があります。

裁判離婚の種類
  • 認諾離婚:被告が原告の請求を全面的に受け入れて離婚する
  • 和解離婚:訴訟手続きの中で夫婦が和解して離婚する
  • 判決離婚:家庭裁判所が判決で夫婦を離婚させるか否かを決める

認諾離婚や和解離婚の場合は、離婚を希望する原因に関わらず、請求の認諾または和解があった時点で離婚が成立します。

一方で、判決離婚の場合、法定離婚事由が存在するか否かが問題となり、存在しないと認定された場合は離婚できません。

法定離婚事由とは、民法第770条第1項に規定された、不貞、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、開腹が困難な重度の精神病、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときの5つです。

セックスレスを主な原因で離婚を主張する場合、セックスレスが「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまるか否かが焦点となります。

つまり、夫婦にとってセックスレスが婚姻を破たんさせるほどに重大な事由であると、家庭裁判所に認定される必要があるのです。

ただし、セックスレスだけでは重大な事由に当てはまらなくても、他の事情と合わせて夫婦関係の破たんが認定されることでも離婚することは可能です。

セックスレスによる離婚が認められやすいケースと認められにくいケース

セックスレスを主な原因として離婚を希望する場合、離婚が認められやすいケースと認められにくいケースがあります。

セックスレスによる離婚が認められやすいケース

セックスレスを原因とする離婚が認められやすいケースとしては、セックスレスの背景に不貞(浮気)がある場合や、セックスレスが夫婦関係を破たんさせたことを明らかにするだけの証拠資料が揃っている場合です。

セックスレスの背景に不貞(浮気)がある場合

不貞は、法定離婚事由の1つなので、配偶者の不貞を明らかにすることで離婚が認められやすくなります。

実際、セックスレス夫婦の中には、不貞をしている夫または妻が家庭で性交渉を拒否するケースが一定数あります。

セックスレスの背景に不貞がある場合、離婚を決めた理由がセックスレスであっても、不貞を主な理由として離婚訴訟を提起するのが基本です。

単純に、不貞を理由にした方が離婚が認められやすいからです。

証拠資料が揃っている場合

セックスレスが夫婦関係を破たんさせたことを証明する証拠資料が揃っている場合も、離婚が認められやすくなります。

証拠資料としては、以下のような物を挙げることができます。

証拠資料となりえるもの
  • 夫婦の一方が性交渉を拒否し続けていることが分かるメールなどのデータ
  • 性交渉を拒否されたことが原因で夫婦喧嘩を繰り返してきたことが分かる音声やメールのデータ
  • 性交渉を求めて拒絶されたり、性交渉について夫婦で話し合ったりした日を記録したデータまたは紙
  • セックスレスの辛さを綴った日記

証拠資料は、セックスレスが夫婦関係を破たんさせたことが客観的に分かるものである必要があります。

なお、セックスレスの期間が少なくとも1年間以上ないと、いくら証拠資料を揃えても離婚原因としては認められにくいでしょう。

セックスレスによる離婚が認められにくいケース

やむを得ない事情でセックスレスになった、夫婦の両方が性交渉を望んでいない、夫婦の時間が確保できない場合は、セックスレスを理由に離婚を請求しても認められにくいものです。

やむを得ない事情でセックスレスになった場合

加齢による身体機能の低下、病気・ケガ・障害などが原因で性交渉が不能または制限されるようになった場合は、いくらセックスレスの辛さを主張しても離婚が認められる可能性は低くなります。

例えば、病気が原因で勃起不全になった、事故が原因で下半身不随になった、心臓の持病が原因で激しい運動が制限されているなどが、やむを得ない事情として考えられます。

夫婦の両方が性交渉を望んでいない場合

夫婦の両方が性交渉を望んでいない場合も、セックスレスを離婚原因として主張することは困難です。

お互いに性的欲求が乏しく性交渉に関心が薄い場合は、そもそもセックスレスが離婚原因となることがないでしょう。

夫婦の時間が確保できない場合

仕事が多忙で帰宅後は寝るだけの生活や、共働きな上に勤務時間が違って夫婦がすれ違う生活を送ることでセックスレスになった場合も、離婚原因として認められる可能性は低いものです。

なお、別の勤務形態を選択したり、早めに帰宅したりすることが可能であるにも関わらず、家庭を避けた生活を送っていることが証明できたとしても、それだけで離婚が認められることはありません。

セックスレスが原因で離婚する場合の慰謝料請求

慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。

セックスレス自体は不法行為ではないので、慰謝料請求の対象とはなりません。

セックスレスを原因として離婚を請求する場合、セックスレスが夫婦関係を破たんさせた原因であると主張し、客観的な資料によって主張を証明する必要があります。

しかし、すでに書いたとおり、セックスレスだけが夫婦関係を破たんさせた原因だと証明することは非常に難しく、慰謝料を請求しても認められるケースはごく稀です。

少なくとも私の知る限り、セックスレスだけを主張して慰謝料が認められたケースはありません。

また、セックスレスの慰謝料の相場を掲載しているサイトがありますが、根拠が示されておらず、内容を確認することができません。

セックスレスの背景に不貞がある場合

不貞が原因のセックスレスの場合、配偶者の不貞が婚姻を破たんさせたと主張して慰謝料を請求することができます。

「不貞=婚姻外の異性と性交渉を持つこと」とする判例が多いですが、性交渉をした証拠がなくても慰謝料が認められることがあります。

不貞の慰謝料の相場は、50万円~300万円の範囲が一般的ですが、不貞の期間や頻度、婚姻期間、子どもの有無、不貞をした配偶者の収入などによって変動します。

また、配偶者の不貞相手に対しても、別途、慰謝料請求することができます。

関連記事

モラハラやDVで慰謝料請求は難しい?離婚時の相場と時効を踏まえて弁護士が解説

まとめ

セックスレスで離婚したいなら、夫婦の合意さえあれば離婚できる協議離婚や調停離婚(審判離婚)を利用するのが基本です。

夫婦の話し合いがこじれて離婚訴訟に至ると、セックスレスで婚姻関係が破綻したことを立証しないと離婚を認めてもらえず、ハードルが一気に高くなります。

セックスレスを理由とした離婚を認める判決もありますが、不貞や悪意の遺棄など法定離婚事由を絡めて主張したケースがほとんどで、セックスレス単体では難しいと言わざるを得ません。

また、慰謝料請求については、セックスレスだけで認められたというケースは経験がなく、判例などにも見当たりません。

ネット上では、「弁護士に依頼すればセックスレスでも離婚や慰謝料請求ができる」という情報が出回っていますが、鵜呑みにするのは危険です。

弁護士は依頼者の主張に基づいて仕事をするので、「セックスレスで離婚や慰謝料を請求したい」と希望すれば、その通りに主張してくれますが、結果は補償されません。

また、離婚できず、慰謝料がもらえなくても、弁護士には数十万円の費用を支払うことになります。

弁護士への依頼は個人の判断ですが、十分に情報を収集した上で、慎重に判断することをおすすめします。

少なくとも、希望した結果が得られない可能性を説明してくれる弁護士を選ぶようにしましょう。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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