借金と離婚!夫や妻の負債を理由に離婚できる?借金も財産分与の対象?

借金 離婚

「婚姻後に夫がギャンブルで借金していることを知った。」、「給料の割に貯金が全くできず疑問に思っていたら、妻が生活費の一部を借金返済に充てていた。」など、配偶者の借金問題に直面する人は少なくありません。

1度目は「一緒に返済して生活を立て直そう。」と思えても、2度3度と借金を繰り返されるうちに愛想をつかし、離婚を考えるようになることもあります。

配偶者(夫または妻)の借金を理由に離婚できる?

結論から言うと、配偶者(夫または妻)の借金(負債)を理由に離婚することは可能です。

ただし、離婚の方法によって難易度が異なり、進め方によっては離婚できないこともあり得ます。

借金を理由に協議離婚する

協議離婚の場合、離婚やそれ伴う諸条件について夫婦の合意ができ、離婚届を市区町村役場に提出して受理されることで離婚が成立します。

したがって、借金を理由に離婚したいと配偶者に伝え、夫婦で合意ができれば離婚することができます。

必要なのは子どもの親権者を決めておくことだけで、夫婦の合意さえできれば、借金の負担割合や支払方法などを決めずに離婚することも可能です。

借金を理由に調停離婚する

調停離婚の場合も、家庭裁判所という公的な場で離婚について協議しますが、違法でない限り、夫婦が合意した内容で調停が成立します。

そのため、借金を理由に離婚したいと主張して配偶者が合意すれば、離婚することができます。

協議離婚と同じく、子どもの親権者さえ決めておけば、財産分与で借金の問題を話し合うことなく調停を成立させることも可能です。

なお、婚姻中の借金問題については離婚前に解決しておくことが望ましいという考え方に基づいて、夫婦が主張しなくても、調停委員から借金問題の解決を促される可能性があります。

必ずしも調停委員の助言に耳を貸す必要はありませんが、助言をきっかけとして夫婦の一方が借金に関する主張を始めて調停が迷走するケースもあるため、調停で借金の問題を取り扱わない場合には、調停開始時にはっきり伝えておかなければなりません。

借金を理由に裁判離婚する

夫婦の協議や離婚調停で夫婦の合意ができない場合、離婚訴訟(離婚裁判)を提起して離婚を目指すことができます。

しかし、離婚裁判で離婚が認められるには、法定離婚事由があることを主張し、裁判所に認定される必要があります。

民法770条第1項に定められた離婚事由は、以下の5つです。

夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(民法第770条第1項)

「借金」という離婚事由は存在せず、配偶者に借金があることだけで離婚事由が存在すると認められるのは困難です。

そのため通常は、法定離婚事由のいずれかに当てはまるよう、配偶者の借金を不貞や悪意の遺棄などに関連付けて主張を構成します。

借金と不貞行為

不貞行為は法定離婚事由であり、配偶者の借金が不貞行為に関わるものである場合は、不貞と借金を関連づけて離婚を主張することができます。

例えば、以下のようなケースでは、借金と不貞行為を関連づけて主張することを検討します。

  • 借金をして不貞相手の生活費を負担している
  • 借金をして風俗店に通っている
  • 借金をして不貞相手との遊興費にしている

不定を理由として離婚を主張するには、配偶者が不貞相手と肉体関係にあることを証明しなければなりません。

例えば、不貞相手への定期的な振込みが確認できる通帳のコピーや、ホテルや風俗店に出入りする場面の画像・映像データなど客観的な証拠を示して主張する必要があります。

借金と悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、婚姻相手と同居せず、夫婦としての協力を拒み、婚姻相手を扶養をしないことです。

引用:離婚ハンドブック

民法第752条は、法律上の婚姻をした夫婦に同居・協力・扶助義務が課せられることを規定しています。

  • 同居義務:同居する義務
  • 協力義務:婚姻生活の維持に協力する義務
  • 扶助義務:高収入の人が低収入(または無収入)の人を扶養する義務

配偶者が同居・協力・扶助義務に違反した場合、悪意の遺棄を理由として離婚を主張することができます。

借金と悪意の遺棄を関連づけることができるケースとしては、以下のようなケースがあります。

  • 働かずに借金をしてパチンコ店へ通っている
  • 借金をしてまで遊び歩いて家に帰らず、生活費も入れない
  • 配偶者に制止されても借金を繰り返す

いずれも借金そのものではなく、同居・協力・扶助義務に借金を関連づけて離婚を主張することで、法定離婚事由が存在することを裁判所に認定させやすくなります。

借金と生死不分明

借金と生死不分明を関連づけて離婚を主張したケースは、担当事案にも判例にも見当たりません。

ただし、借金を苦に出奔した配偶者との離婚請求などはあり得ます。

借金と強度の精神病

生死不分明と同じく、借金と強度の精神病を関連づけて主張したケースは見当たりません。

借金と婚姻を継続し難い重大な事由

その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、不貞行為、悪意の遺棄、生死不分明、強度の精神病以外で、修復できないくらい夫婦関係を破たんさせ、婚姻生活の継続を困難にさせる原因や理由のことです。

引用:離婚ハンドブック

分かりやすく言い換えると「不貞など具体的な法定離婚事由がない場合に主張する事由」です。

例えば、性格の不一致、DV、モラハラ、長期間の別居などによって離婚を主張する場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」を法定離婚事由として離婚を求めます。

ただし、配偶者が借金をしている事実だけでは離婚事由として弱く、主張しても離婚が認められる可能性は低いと言わざるをえません。

特に、借金の事実があっても日常生活に支障がない場合は、借金が婚姻生活を破たんさせたと認められることは困難です。

借金と婚姻を継続し難い重大な事由を関連づけることができるのは、以下のようなケースです。

  • 配偶者の借金の返済を求める訪問や電話が相次ぎ、生活が破たんして別居に至った
  • 配偶者の借金について夫婦喧嘩が絶えず、その度に配偶者からDVを受けている
  • 配偶者に借金を止めるよう促すと罵詈雑言を浴びせられ、日常的にモラハラ被害を受けるようになっている
  • 借金が原因で夫婦関係が悪化して別居に至り、別居が、婚姻生活の実態が亡くなる程度の長期にわたっている

いずれも間接的にではありますが、主張に中に借金を入れこんで離婚を求めることができます。

借金と離婚時の財産分与

借金を抱えた配偶者との離婚で問題になるのが、財産分与における借金の分与方法です。

具体的には、配偶者だけに借金を負担させることができるのか、夫婦で負担しなければならないのかという問題が生じるのです。

財産分与の対象財産

財産分与の対象となるのは、夫婦の「共有財産」です。

夫または妻の「特有財産」は対象外です。

共有財産 夫婦の婚姻中に形成され、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産

例:婚姻中に購入した夫婦名義の不動産、妻名義だが共同使用している財産など

特有財産 夫または妻が婚姻前から所有する財産や、婚姻中に自己名義で得た財産

例:夫または妻が婚姻前から所有する不動産、婚姻前の貯金、父母から贈与を受けた金銭など

財産分与の対象となる主な共有財産は、以下のとおりです。

  • 現金
  • 預貯金
  • 土地、家屋(不動産)
  • 車、家具、貴金属など(動産)
  • 有価証券、投資信託、会員権
  • 職務上の資格
  • 債権、債務

また、将来的に受取りが想定される退職金、私的年金、生命保険なども財産分与の対象となります。

引用:離婚ハンドブック

債務者負担が原則

離婚時の財産分与では、原則として、プラスの共有財産(積極財産)を夫婦が2分の1ずつ分け合い、借金などマイナスの共有財産(消極財産)は対象としません。

プラスの共有財産は、夫婦で分け合っても誰にも迷惑かかりませんし、分け合うことを制限されることもありませんが、マイナスの共有財産には債権者がおり、債権者に無断で分与する権限が夫婦にはなく、無断でした分与に効力が生じないためです。

例えば、夫が作った借金について、離婚時の財産分与で妻が負担する旨の合意をしたとしても、債権者と債務者との関係では何ら効力を生じません。

つまり、借金の債務者は夫のままで、支払義務は夫にあり、支払いが滞れば債権者が夫に取り立てを行います。

なお、離婚調停では、夫婦の一方が住宅ローンの単独債務者であったところ、もう一方が財産分与で自宅を取得して住宅ローンを支払う旨の合意をすることがありますが、調停条項は以下のような文言となります。

相手方は、申立人に対し、相手方が平成○○年◯◯月○○日付け金銭消費貸借契約に基づいて○○銀行○○支店から借り受けた債務(債権額○○万円)について、申立人を債務者とするように○○銀行○○支店と交渉することを約束する。申立人は、相手方に対し、前項の債務について、相手方が債務者から脱退するために○○銀行○○支店と行う交渉及び手続に協力する。

申立人は、相手方に対し、前項記載の○○銀行○○支店に対する借受金債務について、その残額の支払義務を相手方から引継ぎ、平成○○年○○月の支払分から支払うことを約束する。

引用:離婚ハンドブック

夫婦の合意は債権者との関係では効力を生じないため、調停条項でも「約束する」、「協力する」など強制力がない文言が用いられるのです。

ただし、例外的に、借金などマイナスの共有財産が財産分与の対象となることがあります。

以下、借金が財産分与の対象となる場合について、個別に解説します。

借金が夫婦の生活費として費消された場合

配偶者名義の借金であっても、婚姻生活の維持にかかる費用(婚姻費用)として費消されたことが明らかな場合は、財産分与の対象となります。

例えば、食費、衣服費、医療費、子どもの教育費、常識の範囲内の交際費・遊興費なども婚姻費用であり、これらのために費消された借金は財産分与の対象です。

また、夫婦の一方が他方に無断でした借金についても、夫婦の収入・資産や日常生活の水準に照らして必要な範囲内であれば、日常家事債務の連帯差責任に基づいて、財産分与の対象とされます。

日常家事債務の連帯責任については、民法第761条に規定されています。

夫婦の一方が日常の家事に関して第3者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第3者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

(民法第761条)

「日常の家事に関して」と限定し、「生じた債務」に夫婦が連帯して責任を負うことを定めており、夫婦の生活費として費消された借金については、夫婦の合意に関わらず財産分与の対象とされます。

ただし、月々の婚姻費用が30万円で収支の赤字もないところ、夫婦の一方が夫婦の合意なく200万円の借金をして「生活費のための借金」だと主張しても認められません。

あくまで、社会通念上の「常識の範囲内」である必要があります。

財産取得を目的とした借金の場合

財産取得を目的とした借金とは、自動車や住宅などを購入するためにした借金です。

例えば、自動車ローンや住宅ローンなど資産価値のある商品を購入するための借金が当てはまります。

財産取得を目的とした謝金の場合、名義に関わらず財産分与の対象となります。

なお、婚姻中に夫婦が共同して返済していた場合は、離婚時に残った返済について協議します。

例えば、夫名義で購入した自動車のローン(300万円)を夫婦が共同して返済し、離婚時に夫が自動車を取得する場合に、妻が自動車ローンの半分に当たる150万円を財産分与として請求することはできません。

借金と連帯保証人

財産分与では、原則として、配偶者の借金は分与の対象にならず、離婚後に借金を負担することはありません。

しかし、借金の連帯保証人になっている場合は、原則として、離婚後も借金の負担を負うリスクを抱えることになります。

連帯保証人とは、借金をした人(主たる債務者)と連帯して債務を負担するという契約を締結した人です。

連帯保証人は、主たる債務者と同じく債務全体の返済義務を負い、主たる債務者が返済を滞らせた場合、代わりに返済しなければなりません。

債権者から返済を求められた場合、主たる債務者に対して請求するよう促すことはできず、自らの返済義務に基づいて返済する必要があるのです。

例えば、住宅ローンを組むときに、夫が主たる債務者となり、妻が連帯保証人になるケースがあります。

この場合、夫が返済を滞らせると妻が返済する義務を負うことになり、離婚して元夫が住宅を取得したとしても、連帯保証人としての立場は継続されます。

連帯保証人から脱退するには、債権者に脱退を申し出る必要がありますが、事情説明や代わりの連帯保証人を求められるなど容易ではありません。

なお、返済金額については、主たる債務者に返還請求することができますが、返済を滞らせた相手に請求しても返還される期待は持ちにくいものです。

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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