成年後見制度の診断書とは?書式や費用は?鑑定との違いは?

成年後見制度 診断書

成年後見制度は、精神上の障害により判断能力が低下した本人を援助するため、本人に後見等を開始し、後見人を選任して本人の権利や財産を守らせる制度です。

本人に後見を開始し、後見人を選任する手続きは家庭裁判所が行いますが、「精神上の障害により判断能力が低下した」か否かや判断能力の低下の程度については、医療の専門家である医師の診断に基づいて判断されることになります。

診断書は、精神科の医師などが本人の判断能力などについて記載した書面で、家庭裁判所が本人の判断能力を把握し、後見開始の審判などを行う上で重要な意味を持ちます。

この記事では、診断書の概要、診断書の書式、診断書の費用、診断書の開示について解説します。

成年後見制度の診断書とは

診断書とは、医師が本人の判断能力等を診断して作成する書面です。

申立て時に提出を求められる書面の一つで、家庭裁判所が本人の判断能力の程度を把握するための資料となります。

家庭裁判所が把握したいのは、本人の判断能力の低下の有無や程度、それが精神上の障害によるものであること、判断能力の低下により財産の管理・処分に支障が出ていることです。

そのため、診断書には病名(精神上の障害に関するもの)、従前の経緯(入院の有無・期間など)、財産の管理・処分に関する能力の有無や程度などを記載する必要があり、記載に不足があると再提出を求められることがあります。

家庭裁判所が診断書の定型書式(記載内容)を作成しており、原則、定型書式を入手して医師に渡し、記載してもらうことになります。

診断書を作成する医師

診断書を作成する医師について、特定の資格などは定められていません。

しかし、医学的な見地から本人の精神の状況を判断して作成するという性質上、精神科や心療内科など精神神経疾患に関する診療科の医師や、精神神経疾患に詳しい主治医などが作成することが想定されています。

診断書の重要性

家庭裁判所は、本人の判断能力の程度を診断書に基づいて認定します。

法律上、審理の中で鑑定手続きを実施してその結果を踏まえて判断することとなっていますが、最近の実務の傾向を見ていると、鑑定が省略されるケースが増えています。

つまり、本人の判断能力について、ほぼ診断書のみで認定されるケースが増えているのです。

(申立人などの親族の陳述、家庭裁判所調査官が本人と面接した結果なども考慮されますが、医療の専門家である医師の判断が記載された診断書に勝るものではありません。)

そのため、申立て時に提出する診断書次第で後見の類型が決定し、後見人に付与される権限が決まると言っても言い過ぎではありません。

「申立てに必要な書類の中に診断書があるので、医師に作成してもらって提出した。」などと軽い気持ちで提出する人は多いですが、重大な結果をもたらす可能性があるのです。

診断書の書式

診断書の定型書式は、家庭裁判所の窓口で交付してもらえる他、裁判所ウェブサイトからもダウンロードすることができます。

診断書の定型書式に記載される事項は、以下のとおりです。

  • 本人の人定事項
  • 医学的診断
  • 判断能力についての意見
  • 欄外

本人の人定事項

後見等が開始される予定の本人の氏名、性別、生年月日、年齢、住所が記載されます。

医学的診断(診断名、所見、備考)

医学的診断の欄に記載されるのは、診断名、所見、備考です。

診断名の欄には病名の診断が記載されます。

通常の診察による診断の結果などを記載することが想定されており、確定診断である必要はないため、「○○の疑い」と記載されることもあります。

成年後見制度は精神上の障害により判断能力が低下した人を対象とする制度であり、精神神経疾患が記載されていないと、申立て時に指摘されることになります。

所見欄には、診断の根拠となる本人の病歴、発症の時期や経過、現在の症状と重症度、現在の精神状態と関連する既往歴・合併症などを記載されます。

備考欄には、所見欄に書ききれなかった内容や、診断が未確定の場合の今後の見通しや実施予定の検査などが記載されます。

判断能力についての意見

以下の4つから、本人の状態に該当するものをチェックする方式になっています。

  • 自己の財産を管理・処分することができない。
  • 自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である。
  • 自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある。
  • 自己の財産を単独で管理・処分することができる。

「自己の財産を管理・処分することができない=後見相当」、「常に援助が必要である=保佐相当」、「援助が必要な場合がある=補助相当」とされています。

申立ての類型と診断書の「判断能力についての意見」が合致しない場合、家庭裁判所から申立ての変更を求められることがあります。

例えば、後見開始の審判の申立てを行う際に、「自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である(補佐相当)」の意見が付された診断書を提出した場合、申立てを保佐開始の審判に変更するよう求められます。

変更を受け入れなかった場合、家庭裁判所の審理の中で、本人の状態をより詳しく調べる鑑定手続きが行われ、その結果によって申立てどおり手続きを進めるか、申立ての変更を促すか検討されることになります。

申立ての類型が鑑定結果とも合致しない場合、改めて申立ての変更を求められ、受け入れないと審判で申立てが却下されます。

「自己の財産を単独で管理・処分することができる」にチェックがつけられていた場合も、申立ての取下げを求められ、応じないと審判で申立てが却下されます。

判断能力についての意見欄には、チェック以外に意見や判定の根拠などを記載するスペースもあり、判定の根拠となる検査の所見や説明、情報提供した親族などが記載されます。

欄外

欄外には、診断書を作成した医師の勤務先の名称や所在地、診療科、氏名、診断書作成年月日が記載され、医師の印鑑が押されます。

参考:裁判所|成年後見制度

診断書付表

通常、診断書と一緒に、診断書の内容を補足する付表の提出を求められるので、診断書と一緒に医師に渡し、記載してもらいます。

診断書付表の書式は、家庭裁判所の窓口で申立書や診断書の書式と一緒に交付してもらえます。

診断書付表に記載されるのは、家庭裁判所の審理の中で鑑定を実施することになった場合に、診断書作成医が鑑定を引き受けられるか否かについてです。

具体的には、鑑定依頼があった場合の引き受けの可否(引き受ける、引き受けられない、他の医師を紹介する)、鑑定を引き受ける場合条件(鑑定にかかる期間、鑑定費用、鑑定料の振込先、鑑定依頼書面の送付先、連絡先、手引きの要否など)です。

診断書の費用

成年後見制度を利用するときに提出する診断書は、申立人や本人などが医師に依頼して作成してもらう書類です。

そのため、診断書の作成にかかる費用は申立人などが負担することになります。

診断書の開示

家事事件手続法が施行されたことにより、診断書は申立人、手続に参加した本人やその親族、手続に参加していない本人や親族などに開示される取扱いとなっています。

申立人や手続きに参加した本人やその親族には、原則として開示されます。

例外的に、家庭裁判所が開示を認めなかったときは、不服を申し立てることができます。

一方で、手続に参加していない本人やその親族には、原則として非開示ですが、家庭裁判所が相当と認めたときは開示されます。

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