母子家庭の所得税の税金対策:使える控除と計算方法、免除になる年収

所得税

所得の低い母子家庭のシングルマザーは、寡婦控除を利用することで所得税の負担を軽減することができます。

また、寡婦控除などの控除の合計額が年収を上回る場合には所得税が免除(非課税)されます。

所得税が免除・軽減されるとそれだけ離婚後の経済的負担が軽くなりますが、所得税の免除・軽減の制度を知らなかったり、「税金の仕組みってよく分からない。」という苦手意識から敬遠したりするシングルマザーは少なくありません。

本来は免除・軽減されて払わなくていい税金を支払っている、つまり損をしているわけです。

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所得税とは

所得税とは、個人の所得に課される税金です。

1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた課税所得に、一定の税率が適用されて税額が決まります。

所得税は、以下の計算式で算出します。

  • 所得税=課税所得(年収(総支給額)-非課税の手当など-所得控除)×所得税の税率-税額控除額

以下、所得税に関する基礎知識(年収と所得の違い、所得の種類、課税所得、所得控除の種類、給与所得控除、所得税の税率)について、確認していきます。

年収(年間収入)と所得の意味と違い

年収と所得の意味と違いについて、個人事業主と会社員で分けて確認します。

職業 年収 所得
個人事業主 1年間に得た金銭(売上) 年収から必要経費を差し引いたもの
会社員 1年間に得た給料(源泉徴収票の支払金額) 年収から給与所得控除を差し引いたもの

個人事業主の所得は、年収-必要経費で算出する、年収と近い意味を持つものです。

一方の会社員の所得は、年収-給与所得控除で計算します。

なお、この記事では、基本的に会社員の所得税について解説しています。

所得の種類

所得は、以下の10種類に分類されており、各所得に収入、必要経費の範囲、課税所得の計算方法などが規定されています。

  1. 利子所得:預貯金や公社債の利子などの収益分配に関する所得
  2. 配当所得:株主が会社から受ける配当金などの所得
  3. 不動産所得:土地建物などの貸し付けから得る所得
  4. 事業所得:売上など事業から生じる所得
  5. 給与所得:勤務先から得る給料や賞与などの所得
  6. 退職所得:退職手当などの所得
  7. 山林所得:山林を伐採したものを譲渡した場合に生じる所得
  8. 譲渡所得:土地建物などの資産を譲渡して生じる所得
  9. 一時所得:懸賞など上記8つに当てはまらない一時的な所得
  10. 雑所得:公的年金など上記9つに当てはまらない所得

個人事業主は「4.事業所得」、会社員は「5.給与所得」のみのことが多いですが、所得の性質によって他にも利子所得、不動産所得、山林所得などがあります。

課税所得

課税所得とは、非課税の手当などを除く全ての収入から、所得控除を差し引いた所得です。

課税所得は、以下の計算式で算出します。

  • 課税所得=年収(総支給額)-給与所得控除額-非課税の手当など-所得控除合計額

給与所得控除

給与所得控除とは、会社員の所得税などの計算をするときに年収から差し引くことができる控除です。

会社員は、個人事業主のように自分で必要経費を差し引くことができないため、年収に応じて給与所得控除を差し引く仕組みが設けられています。

年収に応じた給与所得控除額は、以下のとおりです。

給与収入(支払金額) 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%(65万円未満の場合65万円)
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超1000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円超 220万円(上限)

※2017年(平成29年)~

給与所得控除と所得控除の違い

勘違いされがちですが、給与所得控除と所得控除は別物です。

給与所得控除は、税金の計算をするときに「年収から」差し引くことができる控除で、給与所得者の所得を計算するために必要になるものです。

一方の所得控除は、税金を計算するときに「所得」から差し引くことができる控除です。

つまり、給与所得者の場合、年収から給与所得控除を差し引いて所得を計算し、そこから個人の事情に応じて所得控除を差し引くことになります。

非課税の手当など

非課税の手当などには、以下のものがあります。

  • 通勤手当
  • 旅費
  • 研修にかかる費用
  • 勤務に必要な衣服の購入費
  • 接待費

所得控除の種類

所得控除とは、納税者の個別事情を考慮して税金の負担を調整するための制度です。

  1. 雑損控除:災害、盗難、横領など資産が侵害された場合の控除
  2. 医療費控除:医療費を支払った場合の控除
  3. 社会保険料控除:社会保険料を支払った場合の控除
  4. 小規模企業共済等掛金控除:共済契約に基づく掛け金を支払った場合の控除
  5. 生命保険料控除:生命保険料を支払った場合の控除
  6. 地震保険料控除:地震保険料を支払った場合の控除
  7. 寄附金控除:寄付をした場合の控除(ふるさと納税でも利用できる)
  8. 障害者控除:障害者である場合の控除
  9. 寡婦控除・寡夫控除:寡婦(特別の寡婦)や寡夫である場合の控除
  10. 勤労学生控除:勤労学生である場合の控除
  11. 配偶者控除:所得が38万円以下の配偶者がいる場合の控除
  12. 配偶者特別控除:所得が38万円を超える配偶者がおり、一定の要件を満たす場合の控除
  13. 扶養控除:扶養親族がいる場合の控除
  14. 基礎控除:個別事情に関わらず一律に38万円控除

所得税の税率

所得税は、課税所得の金額によって5%~45%の範囲で課税率が規定されています(超過累進課税)。

課税所得 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

税額控除

税額控除とは、所得税から直接差し引くことができる控除です。

給料から一定額を差し引く所得控除と異なり、所得税から「直に」差し引くため、適用されると税金の負担を大きく抑えることができます。

税額控除には、住宅ローンを組んだ場合の住宅借入金等特別控除、住居に耐震工事を施した場合の住宅耐震改修特別控除、バリアフリーや省エネ目的にリフォーム工事を施した場合の住宅特定改修特別税額控除など住宅関連の控除があり、当てはまる場合に利用することができます。

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母子家庭のシングルマザーの所得税が免除(非課税)される年収(所得)

すでに解説したとおり、所得税は、「課税所得(年収(総支給額)-非課税の手当など-所得控除)×所得税の税率-税額控除額」で計算されるため、利用できる所得控除や税額控除で控除される金額によって、所得税の金額は変わります。

そして、所得控除や税額控除は、母子家庭だから、シングルマザーだからといって一律に利用できるわけではなく、扶養親族の有無、ふるさと納税をしているか、自宅に耐震工事を施したかなどの個別事情によって利用できるものが異なります。

したがって、母子家庭のシングルマザーの所得税が免除される(非課税になる)年収は、一律にいくらと決まっているわけではありません。

控除される金額の合計が年収を超える場合に、所得税が免除されることになります。

以下、母子家庭のシングルマザーが利用できる所得控除と、所得の計算方法について解説します。

母子家庭のシングルマザーが利用できる所得控除(給与所得者の場合)

母子家庭のシングルマザーが利用できる主な控除は、以下のとおりです。

  • 給与所得控除
  • 基礎控除
  • 社会保険料控除
  • 寡婦控除(寡婦控除(特別の寡婦))
  • 医療費控除
  • 扶養控除

給与所得控除

給与所得控除とは、年収に応じて一定額を差し引くことができる仕組みです。

給与所得控除とは、税負担の公平性を担保するために、給与所得者などが税金を計算するときに、年収から一定額を控除することができる仕組みです。

控除できる金額は、年収に応じて規定されています。

所得税とはの項目で解説したので、詳細は割愛します。

基礎控除

基礎控除とは、所得税などの計算をするときに、誰でも一律に38万円を差し引くものです。

基礎控除を除く所得控除は適用されるのに一定の条件がありますが、基礎控除は一律に38万円が控除されます。

したがって、年間所得が基礎控除未満(38万円未満)の場合、所得税は免除(非課税)となります。

社会保険料控除

社会保険料控除とは、自分や同一生計の子どもや扶養親族などの社会保険料を支払った場合、支払った金額について差し引くものです。

社会保険料控除で控除できる金額は、1年間に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。

社会保険料控除の対象となるのは、健康保険、国民年金、厚生年金保険などの保険料で被保険者として負担するもの、国民健康保険の保険料、国民年金基金の加入員として負担する掛金などです。

社会保険料控除を受けるには、例えば、国民年金の保険料や国民年金基金の掛金に係る社会保険料控除については、保険料や掛金の金額を証する書類を年末調整の際に提出する給与所得者の保険料控除申告書に添付します。

寡婦控除(寡婦控除(特別の寡婦))

寡婦控除とは、寡婦(特別の寡婦、寡夫)の要件を満たす場合に、一定の金額を所得から差し引くものです。

寡婦控除には3つの種類があります。

  • 寡婦控除
  • 寡婦控除(特別の寡婦)
  • 寡夫控除

シングルマザーに関係がある寡婦控除と寡婦控除(特別の寡婦)の要件は、以下のとおりです。

寡婦控除

その年の12月31日の時点で以下のいずれかに当てはまる女性で、以下の要件を満たす場合

  • 法律上の婚姻をした夫と死別または離婚した後に再婚していない、または夫が生死不明で、親きょうだいなどの扶養親族または同一生計の子どもがいる
  • 法律上の婚姻をした夫と死別した後に再婚していない、または夫が生死不明で、合計所得金額が500万円以下

寡婦控除(特別の寡婦)

寡婦が、以下の要件を全て満たす場合

  • 法律上の婚姻をした夫と死別または離婚した後に再婚しておらず、または夫が生死不明である
  • 扶養親族の子どもがいる
  • 合計所得金額が500万円以下

寡婦控除による所得税の控除額は、以下のとおりです。

区分 所得税
寡婦控除 27万円
寡婦控除(特別の寡婦) 35万円

関連記事

寡婦控除とは?条件は年収?控除額は?所得税や住民税の負担が減る?

医療費控除

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に自己または同一生計の子どもや扶養親族などのために支払った医療費が一定額を超える場合、支払った医療費の額に基づいて計算された金額が控除されるものです。

医療費控除の要件は、以下のとおりです。

  • 納税者が、自己または同一生計の子どもや扶養親族などのために支払った医療費である
  • その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費である

医療費控除の対象となる金額は、以下の計算式で求めることができます。

  • 実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円

医療費控除の上限は200万円です。

また、総所得金額などが200万円未満の人は、総所得金額などの5%の金額です。

扶養控除

扶養控除とは、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合、一定に金額を差し引くものです。

扶養親族とは、その年の12月31日時点で、以下の要件を全て満たす人です。

  1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)、里子、市町村長から養護委託された老人
  2. 納税者と同一生計である
  3. 年間の合計所得金額が38蔓延以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または、白色申告者の事業専従者でない

控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年の12月31日時点で16歳以上の人です。

扶養控除の控除額は、以下のとおりです。

区分 控除額
控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族 48万円(同居などの場合は58万円

※特定扶養親族:控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の人

※老人扶養親族:控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日時点で70歳以上の人

母子家庭のシングルマザーの所得税の計算方法

所得税の計算方法

出典:所得税の仕組み|国税庁

具体的な事例で所得税の計算方法を確認していきましょう。

なお、復興特別所得税については加味していません。

事例のプロフィール

  • 氏名:B子さん
  • 性別:女性
  • 年齢:42歳
  • 勤務形態:派遣社員
  • 年収:300万円
  • 1年間に支払った社会保険料:30万円
  • 1年間に支払った医療費20万円(B子さん本人と子どもの合計額)
  • 生命保険料:なし
  • 家族構成:夫と離婚して子ども(17歳)と2人暮らし

給与所得控除額の計算

まず、給与所得控除額を計算します。

Aさんの年収は300万円なので、給与所得控除一覧表の「180万円超360万円以下の計算式を使って給与所得控除額を計算します。

給与所得控除額:300万円×0.3%+18万円=108万円

所得控除を適用する

次に、所得控除を適用します。

Bさんが利用できる所得控除は、以下のとおりです。

  • 基礎控除:38万円
  • 社会保険料控除:30万円(支払った社会保険料全額を控除)
  • 医療費控除:10万円(20万円-0円-10万円)
  • 寡婦控除(特別の寡婦):35万円(離婚、扶養親族の子ども、合計所得金額の要件をすべて満たす)
  • 扶養控除:38万円(子どもが17歳)

所得控除の合計額:38万円+30万円+10万円+35万円+38万円=151万円

課税所得を計算する

B子さんの年収、給与所得控除、所得控除合計額から課税所得を算出します。

課税所得:300万円-108万円-151万円=41万円

所得税額を計算する

課税所得に所得税の税率をかけて所得税額を計算します。

所得税の税率は、課税所得が195万円以下なので5%です。

所得税額:41万円×0.05=20,500円

所得税額から直に控除するものはないので、B子さんの所得税額は20,500円となります。

母子家庭の助成・減免・割引!健康保険料免除の免除や医療費助成など

住民税の非課税(免除)

所得の低い母子家庭のシングルマザーは、一定の要件を満たす場合は住民税も非課税(免除)されます。

詳細は関連記事で解説しています。

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母子家庭の税金(住民税):非課税世帯とは?免除の年収はいくらまで?

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投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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