その他婚姻を継続し難い重大な事由とは?離婚裁判で認められる事由は?
- 離婚
最終更新日: 2019.03.25
離婚訴訟では、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、民法で規定された離婚事由の一つですが、その内容は様々です。
目次
その他婚姻を継続し難い重大な事由とは
その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、離婚訴訟において、他の法定離婚事由に当てはまらない事情を主張して離婚請求する場合に主張されるものです。
明確な定義がなく、性格の不一致からDV・モラハラまで婚姻を継続しがたい様々な事情を主張することができるため、多くの離婚訴訟で主張されています。
ただし、どのような事情を主張するにしても、それが夫婦関係の破綻の原因となっている必要があります。
法定離婚事由
民法第770条第1項では、法定離婚事由が5つ規定されています。
夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
(民法第770条第1項)
その他婚姻を継続し難い重大な事由として主張される事情
その他婚姻を継続し難い重大な事由として離婚訴訟で主張されることが多いのは、以下のような事情です。
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性格の不一致
最も多いのは、性格の不一致です。
最高裁判所が公表している司法統計では、家庭裁判所に申し立てられた婚姻関係事件(夫婦関係調整(離婚・円満)、同居協力扶助、婚姻費用分担事件)の動機のうち、約半数が「性格が合わない(性格の不一致)」となっています。
また、協議離婚においても、相当数が性格の不一致を理由に離婚していると考えられます。
性格の不一致は、言葉の持つ意味合いが一人ひとり異なりますが、一般的には以下のような内容が当てはまります。
- 生活設計、家事育児分担、子どもの教育方針など夫婦間で意見が合わない
- 会話や外出など夫婦で何をしても楽しくない
- 身体の相性が悪い
- 金銭感覚や生活水準が合わない
- 配偶者が親の言いなりで夫婦では何も決められない
- 配偶者から大切にされていないと感じる
- 配偶者と同じ空間にいるだけでストレスが溜まる
- 配偶者のことが尊敬できない
- 互いに相手を避けるようになった
引用:離婚ハンドブック
離婚訴訟で性格の不一致を主張した場合、婚姻関係が破綻して回復の見込みがないことが客観的に明らかであると判断されると、離婚が認められます。
しかし、性格が完全に一致する夫婦はおらず、どの夫婦も性格の不一致や価値観の違いを感じ、多少なりとも不満を抱きながら婚姻生活を継続しているものです。
そのため、単に性格が不一致という主張では離婚は認められず、客観的な婚姻関係の破綻がある場合に限って認められるのです。
性格の不一致を主張する場合のポイント
性格の不一致で離婚を認めさせるには、性格の不一致や価値観の違いが婚姻関係を破綻させる原因だと家庭裁判所に推測させる主張と証拠を示すことです。
証拠としては、以下のようなものが考えられます。
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ただし、判例を確認すると、性格の不一致だけを主張して離婚を求めて認められたケースは見当たりません。
実務上も、性格の不一致だけで婚姻関係が破綻したことを立証するのは困難なケースが多く、通常は、他の事情を合わせて主張します。
DV(家庭内暴力)・モラハラ
実務上、その他婚姻を継続し難い重大な事由として主張するケースが多く、比較的離婚が認められやすいのが、DV(家庭内暴力)やモラハラです。
DVは相手の身体や人格を傷つける犯罪行為で、婚姻関係を破綻させることは社会通念上も明らかであり、いかなる事情があっても正当化できるものではありません。
ただし、近年、虚偽DVの問題が社会的に注目を浴びるようになったことで、家庭裁判所の判断も慎重になりつつあり、客観的な証拠を示しながら暴力が推察される主張を行うことが重要になっています。
例えば、DVでできた傷や医師の診断書を提出しても、それだけではDVとは認定されず、家庭裁判所がDVがあったと推察できるような主張を構成する必要があります。
モラハラについても、近年、ハラスメントの一つとして注目を浴び、人格権を侵害する精神的なDVとして問題視されるようになっています。
しかし、ある言動・態度をモラハラと受け取るか否かは個人差があり、また、DVと比較して立証することが難しいため、モラハラ加害者が事実を認めない限り、モラハラだけで離婚が認められることは困難です。
DVやモラハラの証拠としては、以下のようなものを挙げることができます。
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児童虐待
子どもに対する虐待は、親子関係だけでなく夫婦関係を破綻させる原因となり、その他婚姻を継続し難い重大な事由として主張することができます。
児童福祉法第2条では、児童虐待が4つに分類されています。
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夫婦間のDVやモラハラと同じく社会通念上許されない行為で、虐待の内容や程度によっては犯罪になることもあり、児童虐待を主張して裏づける証拠を提出すれば離婚が認められ、親権者も加害者ではない親に指定されます。
児童虐待を主張するときの主な証拠は、以下のとおりです。
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同居・協力扶助義務違反
民法上、法律婚をした夫婦には、同居・協力扶助義務が課せられます。
以下のような同居協力扶助義務に違反する状況がある場合、その他の事由または悪意の遺棄という法定離婚事由で離婚を求めることができます。
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親族関係
親族関係の悪さを理由に離婚する場合も、その他の事由で離婚を求めます。
典型的なのは嫁姑関係が悪く離婚したいというケースですが、妻の母が頻繁に金の無心に来る、夫のきょうだいが高圧的・差別的な態度をとるなど、幅広く親族関係のトラブルが原因で離婚を希望する場合も含まれます。
性的不調和(セックスレスなど)
セックスレスなどの性的不調和を理由として離婚したいと希望する夫または妻は、少なくありません。
平成29年度司法統計で家庭裁判所に申立てがあった婚姻関係事件の申立て動機を確認すると、夫の申立て動機の第3位、妻の申立て動機の第5位が性的不調和(申立て動機総数に占める性的不調和の割合は夫が19.2%、妻が7.3%)となっています。
セックスレスなどの性的不調和がその他婚姻を継続し難い重大な事由と認められるのは、夫婦関係を破綻させたと主張し、主張を裏づける客観的な証拠が揃っている場合です。
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一方で、病気や怪我などのやむを得ない事情がある場合、夫婦療法が性交渉を望んでいない場合、夫婦生活を営む時間が確保できない場合などは、セックスレスなどを離婚理由として主張しても認められにくいものです。
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逮捕・服役
配偶者が逮捕されたり服役したりすると、夫婦関係や家庭に大きな影響が及びます。
特に、事件がニュースなどで報道された場合の影響は深刻で、周囲の目や嫌がらせなどを避けるために転居や転校を余儀なくされるケースが少なくありません。
当然ですが、犯罪に手を染めた配偶者への不信や怒りなど負の感情から離婚を決意する人は多く、婚姻関係の破綻が認められれば離婚することができます。
病気や障害
病気や障害を抱えた配偶者との婚姻関係の維持が困難になり、離婚を考える人もいます。
重い精神病に罹った場合、「回復の見込みがない強度の精神病」という法定離婚事由を主張することもできますが、離婚が認められる基準が厳格です。
そのため、病気や障害を理由に離婚を主張する場合も、その他婚姻を継続し難い重大な事由とするのが一般的です。