卒婚とは?離婚や別居との違いと卒婚後の生活費は?

卒婚

近年、卒婚という選択をする夫婦が増加傾向にあります。

卒婚は、離婚せずに夫婦関係を卒業するという意味で用いられていますが、具体的なメリットやデメリットを把握している人は限られています。

卒婚とは

卒婚とは、法律上の婚姻をした夫婦が、離婚せず婚姻関係を継続したままで、互いに干渉せず別々の人生を歩むことです。

端的に言うと「結婚を卒業する」ということです。

フリーライターの杉山由美子が著書「卒婚のススメ」で用いた造語で、芸能人が卒婚を実践していることが報道されるなどして、徐々に世間一般へ浸透してきました。

卒婚は、夫婦としての生活実態はないが離婚していない状態で、必ずしも夫婦間に大きな不和や紛争が存在するわけではないのが特徴です。

夫婦仲に大きな問題はないが、配偶者のお世話をしたり家庭を守ったりするよりも、配偶者との生活に囚われずに自分がしたいことに能力や時間を使いたい人にとっては魅力的な選択肢といえます。

卒婚を希望する世代

卒婚という単語からは、「仕事や子育てを終えたシニア世代の夫婦が、互いに別々の人生を歩む選択をすること」をイメージする人が多いものです。

実際、卒婚を望む世代を調査した結果でも、シニア世代が多いことが確認できます。

若い世代ほど離婚して再婚するという選択肢を選びやすいですし、婚姻生活で生じるしがらみも限定的であり、あえて卒婚を選択するメリットが見当たらないことが影響していると考えられます。

しかし、若い世代でも卒婚を希望する夫婦が一定数います。

例えば、夫婦共働きですれ違い生活が続き、夫婦としての生活実態はないに等しく愛情も感じていないが、離婚までする必要はないと思っているケースがあります。

つまり、たくさんの時間や労力を割いてまで離婚するよりも、円満ではないが夫婦関係が破たんするほどの大きな問題もない現状を維持する方が楽なので、卒婚したいと思っているのです。

卒婚と離婚との違い

離婚とは、法律上の婚姻関係を解消し、夫婦の関係を断ち切ることです。

一方の卒婚は、婚姻関係を維持しながら、夫婦が互いに自分の人生を自由に楽しむことです。

つまり、卒婚と離婚の違いは、「法律上の婚姻関係を維持するか、解消するか」の違いです。

卒婚と別居の違い

別居とは、法律上の婚姻関係を維持しながら、夫婦が別々に生活した状態です。

一方の卒婚は、法律上の夫婦が別々の生き方を選択することであり、必ずしも別々に暮らすわけではなく、同居しながら卒婚する夫婦がいてもおかしくありません。

卒婚と仮面夫婦の違い

仮面夫婦とは、互いに愛情は失せているものの、何らかの目的のために対外的には夫婦として振る舞う状態です。

一方の卒婚は、配偶者との関係よりも自分の人生を楽しむことを重視する夫婦形態であり、夫婦間でも対外的にも夫婦として振る舞うことはありません。

卒婚のメリットとデメリット

卒婚を選択する夫婦が増加しているのは、離婚や別居にはないメリットがあるからですが、卒婚を選択することによるデメリットも存在します。

卒婚のメリット

まず、卒婚のメリットについて確認します。

離婚するための労力や時間がかからない

離婚するには、夫婦間で離婚とそれに伴う諸条件の合意をしなければなりません。

財産分与や慰謝料など金銭面の調整を行う他、子どもがいれば親権を取り決める必要がありますし、通常は養育費や面会交流についても話し合います。

また、協議離婚であれば離婚届を市区町村役場に提出しますし、離婚調停や離婚訴訟であれば、申立て(訴訟提起)から終局するまで、期日出席や書類提出など相当な手間と時間がかかります。

卒婚の場合、基本的には卒婚することと婚姻費用について夫婦が合意すれば実行することができ、離婚と比較すると手軽です。

配偶者の理解が得やすい

離婚は、一昔前と比較するとタブー視されなくなり、夫婦の選択肢の一つとして社会的に受け入れられるようになりましたが、夫婦の一大事であることに変わりありません。

配偶者から離婚を切り出されると、婚姻生活の楽しかったことやつらかったこと、夫婦の思い出などが想起され、それらを整理した上で離婚という問題と向き合わなければなりません。

卒婚の場合もショックは受けますが、離婚と比較すると受けるダメージが小さくて済み、理解も得やすい傾向にあります。

元の夫婦関係に戻りやすい

どんなことでも、「実際にやってみたら元の方が良かった」と後悔することはあります。

夫婦関係についても、「離婚前は配偶者を憎悪していたのに、離婚後は良い面も思い出されて困った。」などと離婚を後悔することがあります。

卒婚は婚姻関係を継続しているため、離婚した場合と比較すると、「元の方が良かった」と思ったときに元の夫婦関係に戻りやすいものです。

卒婚中も婚姻費用を請求できる

婚姻中は夫婦で婚姻費用を分担する義務があり、夫婦が別居する場合は、高収入の夫または妻がもう一方に婚姻費用を支払う義務を負います。

卒婚の場合も婚姻関係は解消されていないため、低収入の夫または妻は配偶者に対して婚姻費用を請求することができます。

関連記事

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卒婚のデメリット

卒婚のデメリットについても確認します。

婚姻の効力が維持される

法律上の婚姻をすると様々な効力が生じ、原則として離婚するまで効力が続きます。

婚姻の効力

  • 夫婦同氏(民法750条)
  • 同居・協力・扶助義務(民法752条)
  • 成年擬制(民法753条)
  • 夫婦間の契約の取消権(民法754条)
  • 貞操義務

夫婦財産制

  • 夫婦財産契約(民法755~759条)
  • 婚姻費用の分担(民法760条)
  • 日常の家事に関する債務の連帯責任(民法761条)

その他

  • 嫡出推定(民法772条)
  • 姻族関係(民法725条3項)
  • 配偶者の相続権(民法890条)

引用:離婚ハンドブック

卒婚を選択した場合、離婚した場合と異なり婚姻の効力が維持されるため、夫婦が互いに自分の人生を楽しむとしても、婚姻の効力には縛られます。

例えば、貞操義務があるため配偶者以外の異性と交際することは認められませんし、高収入の夫または妻は婚姻費用を支払う義務が生じます。

周囲の理解を得にくい

卒婚という夫婦形態は、世間一般に認識されるようになってから日が浅く、周囲から受け入れてもらいにくいこともあります。

夫婦の間では卒婚に合意ができていても、周囲から見ると夫婦関係が悪く見えたり、卒婚を受け入れてもらえなかったりすることがあり得ます。

卒婚か離婚かの選択

通常、卒婚を選択する場合、離婚するか卒婚するかで検討を重ねています。

つまり、婚姻生活における不満を解消するためには離婚する必要があるか卒婚で足りるかなどを考慮して、最終的に卒婚を選択しているのです。

経済的に困窮しないか

卒婚か離婚かを選択する上で重要な要素となるのが経済力です。

卒婚であれば配偶者に婚姻費用分担を請求できますが、離婚後は夫婦関係が断絶されるため請求できなくなります。

子どもの養育費は請求できますが、婚姻費用と比較すると金額は限られています。

そのため、本当は離婚を希望しながら、離婚後の経済力に不安があるために卒婚を選択する人が一定数います。

配偶者が離婚に同意するか

配偶者が離婚に応じない場合に、卒婚を選択することもあります。

婚姻関係が破たんして修復の見込みがないことを理解しながら、世間体やプライドから離婚をかたくなに拒否する人がいますが、そうした人と離婚するのは相当な手間と時間がかかります。

そこで、離婚するのではなく、卒婚をして夫婦で別々に暮らすという選択肢を選ぶことがあります。

離婚訴訟で離婚できるか

離婚訴訟で離婚が認められるには、法定離婚事由が必要です。

配偶者の不貞、生活費を渡さないなどの悪意の遺棄、強度の精神病、DVやモラハラなど夫婦関係を破たんさせた離婚事由がない場合、裁判で離婚が認められることはありません。

夫婦関係に大きな問題はないが配偶者よりも自分を優先した生き方を望む場合、いずれの離婚事由にも当てはまらず離婚が認められない可能性が高く、卒婚を選択することがあります。

【参考】

  • 卒婚のススメ 人生を変える新しい夫婦のカタチ|杉山由美子著|静山社文庫

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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