卒婚の意味とは?離婚と別居との違い、卒婚したい人が考えることは?

    最終更新日: 2019.07.30

近年、卒婚という夫婦関係を選択をする夫婦が増加傾向にあります。

卒婚という言葉は、離婚はしないが夫婦関係を卒業するという「別居以上離婚未満」の意味で用いられますが、具体的なメリットやデメリットを把握している人はまだ多くありません。

この記事では、卒婚の意味、離婚と別居との違い、卒婚を選択するメリットとデメリット、卒婚したい場合に考えることについて解説しています。

卒婚とは

卒婚とは、法律上の婚姻をした夫婦が、離婚せず婚姻関係を継続したままで、互いに干渉せず別々の人生を歩むことです。

端的に言うと「離婚はしないが結婚という夫婦関係を卒業する」ということです。

フリーライターの杉山由美子が、著書「卒婚のススメ」で用いた造語で、芸能人の卒婚宣言が報道されるなどして徐々に世間一般へ浸透してきました。

卒婚は、夫婦としての生活実態はないが離婚していない状態で、必ずしも夫婦間に大きな不和や紛争が存在しないのが特徴です。

夫婦仲に大きな問題はないが、配偶者のお世話をしたり家庭を守ったりするよりも、配偶者との生活に囚われずに自分がしたいことに能力や時間を使いたい人にとっては魅力的な選択肢といえます。

卒婚を希望する世代

卒婚という単語からは、「仕事や子育てを終えたシニア世代の夫婦が、互いに別々の人生を歩む選択をすること」をイメージする人が多いものです。

実際、卒婚を望む世代を調査した結果でも、シニア世代が多いことが確認できます。

若い世代ほど離婚して再婚するという選択肢を選びやすいですし、婚姻生活で生じるしがらみも限定的なので、あえて卒婚を選択するメリットが見当たらないことが影響していると考えられます。

若い世代でも一定数卒婚希望者がいる

しかし、若い世代でも卒婚を希望する夫婦が一定数います。

例えば、夫婦共働きですれ違い生活が続き、夫婦としての生活実態はないに等しく愛情も感じていないが、離婚までする必要はないと思っているケースがあります。

つまり、たくさんの時間や労力を割いてまで離婚するよりも、円満ではないが夫婦関係が破たんするほどの大きな問題もない現状を維持する方が楽だと考えて、卒婚を選択するのです。

卒婚と離婚・別居・仮面夫婦との違い

卒婚との違いが分かりにくいのが、離婚、別居、仮面夫婦です。

卒婚と離婚との違い

離婚とは、法律上の婚姻関係を解消し、夫婦の関係を断ち切ることです。

一方の卒婚は、婚姻関係を維持しながら、夫婦が互いに自分の人生を自由に楽しむことです。

つまり、卒婚と離婚の違いは、法律上の婚姻関係を維持するか、解消するかの違いです。

夫婦が離婚した場合の効果については、関連記事で詳しく解説しています。

関連記事

離婚の効果一覧!戸籍・氏、姻族関係、親権者・監護権者、財産分与、慰謝料

卒婚と別居の違い

別居とは、法律上の婚姻関係を維持しながら、夫婦が別々に生活した状態です。

一方の卒婚は、法律上の夫婦が別々の生き方を選択することです。

別居して卒婚状態を維持する夫婦が多いですが、同居しながら卒婚する夫婦がいてもおかしくありません。

関連記事

離婚前の別居準備と手続き:児童扶養手当(母子手当)や生活費はもらえる?

卒婚と仮面夫婦の違い

仮面夫婦とは、互いに愛情は失せているものの、何らかの目的のために対外的には夫婦として振る舞う状態です。

一方の卒婚は、配偶者との関係よりも自分の人生を楽しむことを重視する夫婦形態であり、夫婦間でも対外的にも夫婦として振る舞うことはないという違いがあります。

卒婚のメリットとデメリット

卒婚を選択する夫婦が増加しているのは、離婚や別居にはないメリットがあるからですが、卒婚を選択したことによるデメリットも存在します。

卒婚のメリット

まず、卒婚のメリットについて解説していきます。

離婚するための労力や時間がかからない

離婚するには、夫婦間で離婚とそれに伴う諸条件の合意をしなければなりません。

財産分与や慰謝料など金銭面の調整を行う他、子どもがいれば親権を取り決める必要がありますし、通常は養育費や面会交流についても話し合います。

また、協議離婚であれば離婚届を市区町村役場に提出する必要があります。

離婚調停や離婚訴訟であれば、申立て(訴訟提起)から終局するまで、期日出席や書類提出など相当な手間と時間がかかります。

卒婚の場合、基本的には卒婚することと婚姻費用について夫婦が合意すれば実行することができ、離婚と比較すると時間も手間も費用も掛かりません。

配偶者の理解が得やすい

離婚は、一昔前と比較するとタブー視されなくなり、夫婦の選択肢の一つとして社会的に受け入れられるようになりましたが、夫婦の一大事であることに変わりありません。

配偶者から離婚を切り出されると、婚姻生活の楽しかったことやつらかったこと、夫婦の思い出などが想起され、それらを整理した上で離婚という問題と向き合わなければなりません。

卒婚の場合もショックを受ける人はいますが、離婚と比較すると受けるダメージは小さくて済み、理解も得やすい傾向にあります。

元の夫婦関係に戻りやすい

どんなことでも、「実際にやってみたら元の方が良かった」と後悔することはあります。

夫婦関係についても、「離婚前は配偶者を憎悪していたのに、離婚後は良い面も思い出されて困った。」などと離婚を後悔することがあります。

卒婚は、婚姻関係を継続しているので、離婚した場合と比較すると、「元の方が良かった」と思ったときに夫婦関係を修復しやすいのもメリットです。

卒婚中も生活費(婚姻費用)を請求できる

婚姻中は夫婦で婚姻費用を分担する義務があり、夫婦が別居する場合は、高収入の配偶者がもう一方に婚姻費用を支払う義務を負います。

卒婚の場合、婚姻関係は解消されていないので、低収入の配偶者は婚姻費用を請求することができます。

婚姻費用分担については、関連記事で詳しく解説しています。

別居タイプの卒婚を選択する場合、別居する前に生活費について取り決めておくことが大切です。

関連記事

婚姻費用分担とは?婚姻費用の内訳と婚費を請求できる期間は?

卒婚のデメリット

次に、卒婚のデメリットについて解説します。

婚姻の効力が維持される

法律上の婚姻をすると様々な効力が生じ、原則として離婚するまで効力が続きます。

効力内容
夫婦の権利義務
  • 夫婦同氏(民法750条)
  • 同居・協力・扶助義務(民法752条)
  • 成年擬制(民法753条)
  • 夫婦間の契約の取消権(民法754条)
  • 貞操義務
夫婦財産制
  • 夫婦財産契約(民法755~759条)
  • 婚姻費用の分担(民法760条)
  • 日常の家事に関する債務の連帯責任(民法761条)
その他
  • 嫡出推定(民法772条)
  • 姻族関係(民法725条3項)
  • 配偶者の相続権(民法890条)

卒婚を選択した場合、離婚した場合と異なり婚姻の効力が維持されます。

そのため、夫婦が互いに自分の人生を楽しむとしても、婚姻の効力(義務)に縛られることになります。

例えば、貞操義務があるので配偶者以外の異性と交際することは認められませんし、高収入の配偶者はもう一方に婚姻費用を支払う義務が生じます。

周囲の理解を得にくい

卒婚という夫婦形態は、世間一般に認識されるようになってから日が浅く、まだまだ周囲には受け入れられにくいものです。

卒婚という言葉すら聞いたことがない人もいます。

夫婦の間では卒婚に合意ができていても、周囲から見ると夫婦関係が悪く見えたり、卒婚を受け入れられなかったりするケースも珍しくありません。

卒婚したい人が考えること

通常、卒婚したいと思った場合、離婚するのか卒婚するのかで迷うことになります。

婚姻生活における不満や満たされなさを解消するために、離婚する必要があるのか卒婚で足りるのかを考えて、最終的に卒婚を選択しているのです。

そこで、卒婚したい人が考えておくことについても書いておきます。

経済的に困窮しないか

卒婚か離婚かを選択する上で重要な要素となるのが、経済力です。

卒婚であれば配偶者に婚姻費用分担を請求できますが、離婚後は夫婦関係が断絶されるので請求できなくなります(過去分を財産分与として請求する余地はあります。)。

子どもの養育費は請求できますが、婚姻費用と比較すると金額は限られています。

そのため、本当は離婚を希望しながら、離婚後の経済力に不安があるために卒婚を選択する人が一定数います。

配偶者が離婚に同意するか

配偶者が離婚に応じない場合に、卒婚を選択することもあります。

婚姻関係が破たんして修復の見込みがないことを理解しながら、世間体やプライドから離婚をかたくなに拒否する人がいますが、そうした人と離婚するのは相当な手間と時間がかかります。

そこで、離婚するのではなく、卒婚をして夫婦で別々に暮らすという選択肢を選ぶことがあります。

この場合、別居と卒婚の線引きは難しいところがありますが、夫婦関係に見切りをつけて新しい一歩を踏み出す場合は、卒婚といえるでしょう。

離婚訴訟で離婚できるか

離婚訴訟で離婚が認められるには、法定離婚事由が必要です。

配偶者の不貞、生活費を渡さないなどの悪意の遺棄、強度の精神病、DVやモラハラなど、夫婦関係を破たんさせる離婚事由が見当たらない場合、裁判で離婚が認められることはありません。

夫婦関係に大きな問題はないが、自分の希望を優先した生き方のために離婚を主張した場合、いずれの離婚事由にも当てはまらず離婚が認められない可能性が高いです。

こうした場合、通常は一定期間以上の別居期間を設け、改めて離婚を主張するケースが多いですが、中には離婚に力を注ぐことに疲れ、卒婚状態を維持する選択する人がいます。

>>>「婚姻」の記事一覧に戻る

【参考】

  • 卒婚のススメ 人生を変える新しい夫婦のカタチ|杉山由美子著|静山社文庫
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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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