特殊調停事件とは?離婚無効や取消しは合意に相当する審判が必要?

特殊調停 合意に相当する審判

家事事件の調停事件には、別表第2調停事件、特殊調停事件、一般調停事件の3種類があります。

このうち特殊調停事件は、調停で当事者の合意ができても調停が成立せず、必ず審判で判断が下される「特殊」な事件です。

特殊調停事件とは

特殊調停事件とは、離婚と離縁の訴えを除く身分関係の形成や存否確認に関する事項についての調停事件です。

家事事件手続法が施行される前の家事審判法時代には、家事審判法23条事件と呼ばれていました。

身分関係の形成や存否確認に関する事項は、戸籍の記載にも関わるなど公益性が高いことから、個人の意思や当事者の合意によって処分することが許されず、本来は、人事訴訟を提起して判決によって解決されるべきものです。

しかし、人事訴訟の提起は当事者にとって負担が重く、身分関係というプライバシーに関わる事項について公開の法廷で取り扱われることに対する抵抗感を抱く当事者も少なくありません。

そのため、①当事者の間に身分関係に関する問題について審判で解決する合意があり、②問題の原因や事実に争いがないときには、特殊調停でその旨を確認した上で、家庭裁判所が必要な事実の調査を行い、審判を行うことができることになっています。

特殊調停に調停委員が関与しているときは、調停委員の意見も聴取する必要があります。

特殊調停に続いて行われる審判を、合意に相当する審判といいます。

合意に相当する審判とは

合意に相当する審判とは、身分関係の形成や存否確認に関する事項について、特殊調停の内容や事実の調査の結果を踏まえて家庭裁判所が行う審判です。

家事事件手続法第277条には、以下のとおり規定されています。

1 人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。ただし、当該事項に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。

一 当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。

二 当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消しの原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。

2 前項第一号の合意は、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項及び第二百七十条第一項に規定する方法によっては、成立させることができない。

3 第一項の家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、合意に相当する審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。

4 第二百七十二条第一項から第三項までの規定は、家庭裁判所が第一項第一号の規定による合意を正当と認めない場合について準用する。(申立ての取下げの制限)

引用:家事事件手続法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

特殊調停事件の特徴

通常、家庭裁判所の家事調停は、何らかの問題について当事者の合意ができると調停が成立し、その調停調書は確定判決や確定審判と同じ効力をもちます。

例えば、離婚調停では、離婚することや離婚条件について夫婦の合意ができると、裁判官が合意内容を確認し、裁判所書記官が合意内容を調停調書に記載することで、調停が成立します。

そして、調停の取り決めが守られないときは、履行勧告、履行命令、強制執行などで履行を促したり強制したりすることができます。

一方で、特殊調停事件は、調停で当事者の合意ができたとしても調停成立で手続が終わることはなく、必ず家庭裁判所が必要な事実の調査を行い、合意に相当する審判で判断を示します。

関連記事

離婚調停とは?期間・流れ・費用、メリット・デメリット、弁護士の要否

調停前置主義が適用される

特殊調停事件で取り扱う内容は、本来的には人事訴訟で解決されるべき問題ではありますが、調停前置主義が適用されます。

つまり、人事訴訟を提起する前に、まず、特殊調停事件を申し立てて、審判で解決することが想定されているのです。

調停や審判を経ずに人事訴訟を提起すると、家庭裁判所の職権で調停に付されることになります(付調停)。

関連記事

調停前置主義とは?条文と例外、調停を取り下げても離婚訴訟できる?

取下げが制限されている

別表第2調停や一般調停は、調停に代わる審判が行われた後を除き、理由に関わらずいつでも取り下げることができます。

しかし、家事事件手続法278条では、「家事調停の申立ての取下げは、合意に相当する審判がされた後は、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。」と定められています。

特殊調停や合意に相当する審判は、当事者間に審判で解決する合意があることを前提とする手続です。

調停を申し立てた人が申立人ではありますが、審判による解決を期待しているというところは相手方も共通しています。

そのため、特殊調停で当事者間の合意が確認できているにも関わらず、合意に相当する審判がされた後も申立人の一存で取り下げができることになると、相手方の期待を裏切ることになってしまいます。

また、合意に相当する審判では、家庭裁判所が、当事者の合意を前提として職権による事実の調査を行います。

調査の後に申立てが取り下げられると、家庭裁判所の労力が水の泡となってしまう上、取下げの後に再申立てがなされると、さらに労力がかかることになります。

以上の事情から、家事事件手続法上も取下げの制限が規定されています。

特殊調停事件一覧

特殊調停の対象となるのは、以下のような事件です。

  • 婚姻の無効・取消し
  • 協議離婚の無効・取消し
  • 婚姻関係の存否確認
  • 嫡出否認
  • 認知
  • 認知の無効・取消し
  • 父を定める訴え
  • 実親子関係の存否確認
  • 養子縁組の無効・取消し
  • 協議離縁の無効・取消し
  • 養親子関係の存否確認
  • その他の身分関係の形成又は存否確認

夫婦の合意がないまま離婚届が提出されるおそれがあるときは、あらかじめ市区町村役場に離婚届不受理申出をしておきますが、申出をしておらず、離婚届が勝手に提出されて受理された場合は、離婚無効の特殊調停を申し立てることになります。

また、離婚を主張する夫婦の間では、認知の無効・取消しや乳を定める訴え、実親子関係の存否確認(親子関係不存在確認)などが争われることもあります。

いずれも、夫婦や親子の身分関係に関する事項であり、夫婦や親子の意思や合意だけで決めることはできず、特殊調停を経て合意に相当する審判で判断してもらわなくてはなりません。

関連記事

離婚届不受理申出とは?期間・期限、取下げは?勝手に提出を予防?

特殊調停事件の流れ

特殊調停の主な流れは、以下のとおりです。

  1. 家庭裁判所に特殊調停の申立てを行う
  2. 調停において、当事者間に①申立ての内容を審判で解決する合意があること、②申立ての原因や事実に争いがないことを確認する
  3. 家庭裁判所が、職権で必要な事実の調査を行う
  4. 家庭裁判所が、事実の調査の結果、当事者の合意が相当と認めたときは、合意に相当する審判を行う
  5. 合意に相当する審判から2週間で審判が確定する

家庭裁判所が行う事実の調査とは、当事者から提出された資料の精査や家庭裁判所調査官による調査(当事者や関係機関の面接など)などで、事件によって調査の内容は異なります。

合意に相当する審判が確定すると、確定判決と同じ効力をもつことになるため、人事訴訟を提起して確定判決を得たときと同じ効力は発生します。

調停で当事者の合意がまとまらなかったときは、調停は不成立で終了し、人事訴訟を提起して問題の解決を目指すことになります。

関連記事

家事事件とは?審判・調停・人事訴訟、別表第1と別表第2の違いは?

アーカイブ

ページ上部へ戻る