離婚調停の取り下げ手続の方法と効果は?取下書の記載と同意の要否は?

離婚などの調停の終わり方には調停成立、調停不成立、取下げ、調停をしない措置、当然終了等がありますが、申立人だけに認められているのが申立ての取下げです。

申立ての取下げとは

申立ての取下げとは、申立人が事件の申立てを取り下げることにより、その事件を終わらせる手続きです。

離婚や婚姻費用など家事調停の申立ての取下げについては、家事事件手続法第273条に規定されています。

  1. 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
  2. 民事訴訟法第261条第3項及び第262条第1項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。この場合において、同法第261条第3項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、「家事調停の手続の期日」と読み替えるものとする。

(家事事件手続法第273条第1項)

申立ての取下げの方法

家事事件手続法第273条第2項は、民事訴訟法第261条第3項を準用しています。

訴えの取下げは、書面でしなければならない。ただし、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない。

(民事訴訟法第261条第3項)

条文に規定されているとおり、家事調停の申立ての取下げは「書面で」しなければなりません。

「家事調停の手続きの期日」には口頭で取下げをすることができることになっていますが、実際のところ、調停期日に取り下げる意思を示すと、取下書を提出するよう求められます。

申立ての取下げの効果

家事事件手続法第273条第2項は、民事訴訟法第262条第1項を準用しています。

訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。

(民事訴訟法第262条第1項)

家事調停の申立てが取り下げられると、「初めから係属していなかった」とみなされます。

したがって、調停期日に当事者間で合意したことも何も決まらないままとなります。

申立ての取下げができる人と同意の要否

家事調停の取下げができるのは申立人またはその代理人弁護士だけです。

調停の相手方や第三者が取り下げることは認められていません。

また、離婚調停の場合は、相手方の同意なく取り下げることができます。

取下げができる時期

取下げができるのは「家事調停事件が終了するまで」です。

調停成立などで家事調停が終了されるまでであれば、申立人は「いつでも」申立てを取り下げることができます。

取下げの理由も問われません。

例えば、「調停外で紛争が解決した」、「調停で解決する見込みはない」、「相手方が出頭せず調停を続ける意味がない」などの理由で申し立てを取り下げることができます。

また、「多忙で調停期日に出頭できなくなる」、「調停で話すことが精神的につらい」などの個人的な事情で取り下げることも可能です。

離婚調停を取り下げる方法

離婚調停を取り下げるには、原則として、取下書を作成して担当の裁判所書記官に提出する必要があります。

取下書

出典:裁判所ウェブサイト

取下書の入手方法

取下書は、調停期日に担当裁判所書記官からもらうか、裁判所ウェブサイトでダウンロードして入手します。

前者の場合、調停委員に調停を取り下げることを伝えると、書記官が取下書を調停室まで持ってきてくれます。

後者の場合、裁判所ウェブサイト内で取下書の書式を掲載している家庭裁判所を探してダウンロードします。

他地域の裁判所の様式を使用することもできますが、裁判所によってはPDF形式で掲載しているところや、宛先などが印字された様式を掲載しているところがあるため、編集可能で余計な印字がない様式を選ぶ必要があります。

取下書の書き方

取下書の書き方を確認していきます。

宛先

調停を申し立てて調停期日が開かれた家庭裁判所名を記入します。

支部の場合は支部名まで書き込んでください。

作成年月日

取下書を作成した年月日を記入します。

ダウンロードした書式には「平成」と印字されているはずですが、2019年5月1日以降は「令和」を使用することになるため、注意が必要です。

氏名・押印

取下書の作成者(=調停の申立人)の氏名を記入して印鑑を押します。

当事者名

申立人、相手方、事件本人(子供など)の氏名を記入します。

離婚調停であれば申立人と相手方のみ、面会交流であれば事件本人の氏名も記入することになります。

事件番号

調停期日通知書に記載されている、家事調停の事件番号を記入します。

通知書を忘れた場合は、調停委員に確認すれば教えてもらうことができます。

複数の調停を同時に取り下げる場合は、取り下げる調停全ての事件番号を記入してください。

事件名

申し立てた家事調停の事件名を記入します。

複数の調停を同時に取り下げる場合は、取り下げる調停全ての事件名を記入する必要があります。

取下げの理由

取下げの理由は、選択式+自由記載式になっています。

選択肢には「協議離婚が成立した」、「円満同居(復縁)で合意した」、「合意できる見込みがないため」などがありますが、当てはまるものがなければ自由記載します。

取下げ後に同じ調停を申し立てることができる

離婚調停を含む家事調停は、取り下げた後に同じ調停を申し立てることが認められています。

再申立ての理由に制限はなく、「当面別居するつもりで婚姻費用だけ取り決めて離婚調停を取り下げたが、やはり離婚したい」、「相手方の不出頭で取り下げたが、相手方が出頭する意欲を示した」などの理由でも再申立てができます。

また、取下げから再申立てまでの期間にも制限がなく、極端な話、ある日の午前に離婚調停を取り下げて、同じ日の午後に離婚調停を再び申し立てることも可能です。

ただし、取下げから再申立てまでの期間があまりに短いと、申立て段階で詳しく事情を聴かれたり、受理までに時間がかかったりすることがあります。

実務上、取下げの翌日に再申立てをした経験を持つ相談者がおり、その人の場合、再申立ての事情を口頭で説明すれば申立てが受理されたようです。

取下げで離婚訴訟を提起する方法

離婚などの人事訴訟事件では調停前置主義が適用されるため、原則として、訴訟提起前に調停を経る必要があります。

調停前置主義とは、裁判による紛争解決を図る前に、当事者間の話し合いで解決を目指すべきであるという考え方に基づいて、人事訴訟事件の前に調停を経なければならないという制度です。

通常は、離婚調停を申し立てて調停不成立で終了させることで調停前置主義の要件を満たし、離婚訴訟が提起できるようになります。

しかし、離婚調停を取り下げた場合でも、以下のような場合には調停前置主義の要件を満たします。

  • 調停で話し合いを重ねたが、合意に至る見込みがない
  • 調停で話し合いを重ねた後、相手方が出頭してこなくなった
  • 調停期日を重ね、出頭勧告も行われたが、相手方が出頭しない

当事者間の話し合いによる解決が困難な場合や、相手方が調停での解決に非協力的な場合には、調停を取り下げても調停前置主義の要件を満たすと考えられています。

ただし、家庭裁判所によって運用が異なることがあるため、取下げの前に裁判所書記官に離婚訴訟の提起が可能かどうか確認しておく必要があります。

離婚調停と離婚訴訟を別の家庭裁判所で行う場合

離婚調停の管轄は「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または合意管轄」、離婚訴訟の管轄は「夫または妻の住所地の家庭裁判所」であり、ケースによっては調停と訴訟を別の家庭裁判所で行う可能性があります。

調停と訴訟を異なる家庭裁判所で行う場合は、調停を取り下げた裁判所に「事件終了証明書」を申請して交付してもらい、離婚訴訟を提起するときに添付する必要があります。

関連記事

離婚調停の管轄の家庭裁判所は?合意管轄の方法と合意できない時の対応

離婚調停の取下げから訴訟提起までに時間が空いた場合

離婚調停の取下げから訴訟提起までの期間に関する規定はなく、準備が整った段階で訴訟提起することになります。

しかし、何年もの期間が空いた場合は、夫婦関係の変化を理由に離婚調停のやり直しとなる(離婚訴訟を提起しても職権で調停に付される)ことがあります。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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