内容証明郵便の無視・受け取り拒否の影響を解説!居留守は認められる?

内容証明(内容証明郵便)は、「いつ、どのような内容の文書が誰から誰あてに差し出されたか」を証明できる郵便局のサービスです。

離婚紛争においても、不貞の慰謝料請求、離婚条件の伝達、婚姻費用や養育費の請求時点を確定するなどの目的で活用されているので、配偶者やその代理人弁護士から内容証明郵便が届く可能性があります。

内容証明郵便が届くと、相手の本気度を痛感して慌てたり、「記載された期限までに回答しないと罰則があるのではないか。」などと考えたりする人が多いです。

しかし、まずは落ち着き、適切に対応することが大切です。

この記事では、内容証明郵便が届いたときの対応と、内容証明郵便を無視・受け取り拒否した場合の影響について解説します。

無視や受け取り拒否を推奨するものではありません。

あくまで対応について解説しているのであり、実際の対応は個人が判断してください。

内容証明郵便には法的拘束力がない

内容証明郵便で通知が届くと、誰でも驚きます。

差出人が弁護士などの専門職であった場合、「何か悪いことをしてしまったか。」などと強い不安や心配も感じるでしょう。

しかし、内容証明郵便はあくまで、ある文書について「①いつ、②どのような内容で、③誰から、④誰あてに差し出されたか」を証明する文書です(配達証明がついていれば、配達されたか否かも証明されます。)。

内容証明郵便には法的拘束力がありません。

差出人が配偶者(または元配偶者)でも、弁護士などの専門職でも、文書の内容に従う義務はありません。

一方的に質問項目が記載され、期限までに回答を求める内容もありますが、回答しなくても罰則はなく、その後の離婚紛争で不利になることもありません。

まずは、「内容証明郵便には法的拘束力がない」ことを理解し、落ち着いてください。

内容証明郵便が届いたら

内容証明郵便が届いたら、原則として、以下の5ステップを意識して対応するのが基本です。

  1. 内容証明郵便から相手の意向を読み解く
  2. 無視するかどうかを検討する
  3. 相手の提案に応じるかどうかを検討する
  4. 連絡をとって相手の主張を確認する
  5. 相手と協議する

以下、各ステップについて解説していきます。

内容証明郵便から相手の意向を読み解く

文書の内容をよく読みましょう。

相手があえて内容証明郵便を送ってきた理由や相手の求めているものが何かを推測し、それに対する自分の考えを整理します。

離婚やそれに伴う諸条件の協議を求めている場合、離婚に応じるつもりなのか、諸条件の内容は合意する余地があるのかなどについて、一つひとつ具体的に整理してください。

頭の中で考えていてもまとまらない場合は、紙に書き出したりスマホのメモ帳に箇条書きしたりすると整理しやすいです。

自分一人では整理できない場合や、相手の主張の意図や提示された条件の妥当性が分からない場合などは、法律相談を受けるのも一つの方法です。

無視するかどうかを検討する

離婚紛争中に相手やその弁護士などから回答期限付きの内容証明郵便が届いた場合、相手が話し合いを求めていることが多いものです。

したがって、無視して期限までに回答しないと「話し合う気がない。」と思われ、調停や裁判など次のステップに移行されることになり、対立構造がより鮮明になるとともに、解決に要する時間・手間・費用が大きくなります。

例えば、離婚調停が申し立てられると、調停期日の度に休暇を取得して裁判所まで行かなくてはなりませんし、離婚訴訟が提起されると、相手の要求がより過酷になったり、弁護士費用がかさんだりします。

こうした内容証明郵便を無視した場合のデメリットを考慮し、無視するのか、何らかの反応を示すかを決めなければなりません。

いずれにしても、相手から内容証明郵便で通知が届いたら、「離婚紛争を放置できる段階ではなくなった。」と考えるべきです。

相手の提案に応じるかどうかを検討する

内容証明郵便には、相手からの提案が記載されていることがあります。

例えば、「期限までに不貞の慰謝料を支払うのであれば、相場より安い100万円で済ませるが、期限までに支払わないと調停や裁判で相場どおりの200万円を請求する。」という内容が記載されていたとします。

この場合、「相場より安いなら今すぐ支払ってしまおう。」と安易に応じるのは危険です。

必ず自分で慰謝料の相場を調べ、自分のケースで100万円の慰謝料が妥当かどうか確認し、必要があれば専門家に相談した上で相手の提案に応じるかどうかを決めてください。

相手や代理人からの提案であっても、相手の意向を汲んで周到に練った離婚条件案が提示されるため、「専門家の提案だから大丈夫だろう。」と考えないでください。

相手や代理人に連絡する場合も、「主張が整理しきれていない。後日、改めて連絡するので期限を延ばしてほしい。」、「こちらも弁護士に依頼する予定なので、時間が欲しい。」などと即答を避けて対応を検討する時間を確保するのが基本です。

連絡をとって相手の主張を確認する

内容証明郵便に対して何らかの対応をする場合、一度は、相手や代理人などに連絡をとり、相手の主張を直接確認するようにしてください。

特に、文書に具体的な内容が記載されていない場合や、複数の解釈が可能な内容が記載されている場合は、「おそらくこういうことだろう。」と推測するのではなく、直に確認することが重要です。

離婚紛争では当事者双方の認識の違いによって対立が深まることが珍しくないため、少しでも引っかかる内容があれば、必ず確認してください。

また、直に相手や代理人と話すことにより、離婚に対する相手の本気度や各主張の強弱など、文面からは読み取れないニュアンスを掴むことができます。

ただし、相手もこちらの感触をつかもうとあれこれ質問してくるため、あらかじめ相手から聞かれそうな内容を推測し、「何をどの程度まで答え、何を答えないか」を決めておくことが大切です。

相手と協議する

以上の過程を踏まえ、離婚やそれに伴う諸条件について争いはあるが協議の余地は残っている場合、相手や代理人(弁護士のみ)と離婚するか否か、子どもの親権、養育費、財産分与、慰謝料、面会交流、年金分割などについて交渉することになります。

相手に代理人弁護士がついている場合、こちらも弁護士に依頼するか否かを検討します。

裁判所の手続きではなく当事者同士の合意がないと何も決まらないため、交渉の相手が弁護士だからといって臆する必要はなく、書籍やネットで知識をつけて自力で交渉を進めることも可能です。

弁護士に依頼する場合は、費用や勝算などを慎重に検討した上で、離婚紛争について実績のある弁護士に依頼することが大切です。

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内容証明郵便は受け取り拒否や無視ができるか

内容証明郵便は、届いた段階で受け取りを許否することができます。

内容証明郵便の受け取り拒否の方法

内容証明郵便は一般書留として扱われる(利用時に書留料金を支払っている)ため、ポストに投函することは認められず、郵便局の配達員が受取人に直接手渡し、受取人からサインまたは受領印をもらう必要があります。

そのため、サインや押印を拒否したり、自分あての郵便でないと主張したりすれば、受け取りを拒否することができます。

配達員は、受け取りを強制する権限がないため、手渡すことができなかった内容証明郵便を持ち帰り、「〇月〇日に受け取りを拒否した」旨のメモを付して差出人の元に返送します。

居留守を使う方法(無視)

居留守を使った場合、配達員は、不在通知を投函した上で内容証明郵便を持ち帰ります。

郵便局に持ち帰られた内容証明郵便は、7日間の保管期間に受取人から再配達依頼がなければ、「受取人不在」や「留置期間経過」などのメモとともに差出人に返送されます。

内容証明郵便の受け取りを拒否・無視しても届いたものとみなされる

内容証明郵便の受け取りを直接的に拒否または間接的に拒否(居留守)した場合、意思表示は届いたものとみなされるのでしょうか。

判例を確認すると、直に受け取りを拒否した場合は、「自分の意思で受け取らなかったのだから到達したものとみなされる。」とされています(東京地方裁判所平成10年12月25日判決、東京地方裁判所平成5年5月21日判決など)。

例えば、養育費を請求する内容の内容証明郵便の受け取りを拒否した場合でも、請求の意思表示は到達したとみなされます。

一方で、居留守を使って受け取りを拒否した場合については、自分の意思で受け取りを拒否したと推測して到達したとする判例(大阪高等裁判所昭和53年11月7日判決など)と、到達していないとする判例(大阪高等裁判所昭和52年3月9日判決など)があります。

内容証明郵便の受け取り拒否・無視のデメリット

内容証明郵便の受け取りを拒否した場合、差出人は「任意の協議による解決は困難」と判断し、調停や訴訟など裁判所の手続きを利用することを選択します。

その結果、対決姿勢が鮮明になり、内容証明郵便に記載された内容よりも強い請求をされるおそれが高い上、相当な時間・手間・費用がかかることになります。

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離婚ハンドブック編集部

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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