養育費算定表の算定基準と算定方法は?新算定表は裁判所で有効?

養育費 算定表

家庭裁判所で調停や審判で子どもの養育費を取り決める場合、養育費の算定表によって標準的な養育費が算出され、その金額と個別事情に基づいて最終的な養育費が決まります。

養育費の算定表は、標準的な養育費を簡易迅速に算出する目的で作成されており、父母の収入と子どもの人数・年齢が分かれば専門的な知識や経験がなくても算出できます。

裁判所ウェブサイトに公開されており、父母が家庭裁判所の手続きを利用する前に自ら養育費を算出してみることも可能です。

しかし、養育費の算定表の仕組みや考え方はあまり知られておらず、算定表で算出された金額がそのまま養育費として決まると勘違いしている人も少なくありません。

また、家庭裁判所が運用している養育費の算定表とは別に、日本弁護士連合会が新しい算定表を発表しており、どちらを使えば良いのかという混乱も生じています。

養育費の標準的算定方式

家庭裁判所では、養育費の算定について標準的算定方式による運用がなされています。

標準的算定方式とは、養育費の簡易迅速な算定を目的として、家庭裁判所の裁判官などが作成した算定方式です。

標準的算定方式ができるまでの経緯

養育費支払義務は、親権者が子どもを監護養育する義務(民法820条)や親が子どもを扶養する義務(民法877条1項)に基づく義務ですが、その支払方法については法律で規定されていません。

家庭裁判所の実務では、以前から各種算定方式を用いて養育費が算定されていましたが、様々な課題や問題が指摘されていました。

  • 算定方式が複数あり、家庭裁判所が採用した方式によって算出される養育費が変動する
  • 事前に養育費の額を予想しにくい
  • 算定方式が複雑で理解するのが難しい
  • 算定の基礎となる数値が実額で認定されるため、資料収集や算定に時間を要する

養育費は子どもの生活にかかる費用であり、適正な金額が迅速に支払われるべきところ、以前は養育費請求調停や審判を申し立ててから養育費の金額が決まるまでに相当な時間がかかっており、この点が特に問題視されていました。

そこで、家庭裁判所の裁判官などが研究会を立ち上げ、研究結果を「簡易迅速な養育費等の算定を目指して―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案―」(判例タイムズ1111号、判例タイムズ1114号)として発表しました。

現在の家庭裁判所の実務では、この研究結果で提案された標準的算定方式とそれに基づいて作成された算定表が運用されています。

標準的算定方式の特徴

標準的算定方式は、従前の算定方式の課題や問題を踏まえ、簡易迅速に養育費を算定するという目的のために、以下の工夫がなされています。

  • 算定に必要な数値は父母の総収入のみ
  • 公租公課(税金)、職業費、特別経費などは法律や統計に基づく標準的な割合で推計する
  • 父母や子どもの生活費も親子の標準的な生活費の割合を数値化した指数を用いる

実額を把握する必要があるのは父母の総収入のみで、その他の数値は推計や指数などが用いられるため、養育費の算定に必要な資料を収集する手間が大幅に省けます。

また、標準的算定方式に基づく算定表が作成・公表されており、父母の総収入が分かれば誰でも標準的な養育費算出できるため、だいたいの養育費の金額を知った上で父母の協議や調停・審判に臨むことができます。

標準的算定方式による養育費の算出

標準的算定方式では、以下の手順で養育費を算出します。

1.父母の総収入を把握する

標準的算定方式で必要になる実額は、父母の総収入のみです。

給与所得者の場合は源泉徴収票や給与明細(1月~12月分とボーナス)、自営業者の場合は確定申告書などで父母の総収入を確認します。

給与明細では1年分を合算するときに計算間違いをしたり、資料が揃わなかったりすることがあるため、源泉徴収票を確認するのが確実です。

2.基礎収入を算出する

基礎収入とは、総収入から公租公課(税金)、職業費、特別経費などを控除した数値です。

私たちは、給与や事業等で得た金銭をすべて生活費として使うことができるわけではありません。

総収入には所得税や住民税などの公租公課(税金)が課せられ、給与所得者であれば総収入を得るための職業費(交通費、交際費、被服費など)もかかります。

また、子どもの養育費や教育費、医療費、住居費などの特別経費もかかります。

したがって、養育費を算定するときは、総収入をそのまま使用することはできず、総収入から公租公課(税金)、職業費、特別経費などを控除して基礎収入を算出した上で計算することになります。

基礎収入の計算式は、以下のとおりです。

  • 給与所得者の基礎収入=総収入×0.34~0.42
  • 自営業者の基礎収入=総収入×0.47~0.52

給与所得者と自営業者では、公租公課(税金)、職業費、特別経費などが異なることから、基礎収入を算定するときの係数が異なっています。

3.子どもの生活費を算出する

養育費請求調停や審判で算出されるのは、義務者が権利者に支払う養育費です。

標準的算定方式では、まず子供の生活費を算出し、それから義務者の養育費を算出します。

子どもの生活費は、以下の計算式で算出します。

  • 子どもの生活費=義務者の基礎収入×子どもの生活費係数(×子どもの人数)/義務者の生活費係数+子どもの生活費係数(×子どもの人数)

生活費係数(生活費の指数)とは、生活保護法8条に基づいて厚生労働省が告示する生活保護基準の「生活扶助基準」を用いて積算される最低生活費に教育費を加算して算出される数値です。

  • 権利者の生活費係数:100
  • 義務者の生活費係数:100
  • 0~14歳の子どもの生活費係数:55
  • 15~19歳の子どもの生活費係数:90

子どもは成長とともに生活にかかる費用が増加するため、生活費係数も年齢によって分けられています。

4.義務者が権利者に支払う養育費を算出する

義務者が権利者に支払う養育費を算出する計算式は、以下のとおりです。

  • 子どもの生活費×義務者の基礎収入/権利者の基礎収入+義務者の基礎収入

(※義務者の方が権利者より収入が多く、また、権利者が子どもと同居しているケース)

標準的算定方式で算出される養育費はあくまで標準的な金額であり、特別な事情がある場合には算定結果を元に個別に考慮します。

養育費の算定表

養育費の算定表とは、標準的算定方式に基づいて作成された養育費算定に使用する表です。

算定表は、算定表の使い方、養育費の算定表(表1~9)、婚姻費用の算定表(表10~19)で構成されています。

養育費の算定表は、算出される養育費に1~2万円の幅を持たせて一覧化されており、個別の事情にも一定程度対応できるようになっています。

また、子どもの人数(1~3人)と年齢(0~14歳と15~19歳に分類)によって表が分かれています。

子どもが4人以上いる世帯については、標準的算定方式の計算式を利用して個別に計算することになります。

算定表の使用方法は、以下のとおりです。

1.総収入の認定

算定表を利用するには、まず、権利者と義務者の総収入を認定する必要があります。

総収入を確認する方法は、給与所得者と自営業者で異なります。

  • 給与所得者:源泉徴収票の「支払金額」が総収入
  • 自営業者:確定申告書の課税される「所得金額」が総収入

父母の一方が収入に関する資料の提出を拒否した場合、家庭裁判所が賃金センサスなどの資料を用いて個別に算定します。

2.使用する算定表を選択する

子どもの人数と年齢から使用する算定表を選択します。

3.権利者及び義務者の収入欄を選択する

使用する表を選択したら、給与所得者か自営業者かによって収入欄を選択します。

表の縦軸に義務者、表の横軸に権利者の収入欄があるので、それぞれ給与所得者か自営業者かを選択し、年収額に位置にチェックをつけます。

4.婚姻費用の金額を見つける

表の縦軸の義務者の年収額から右方向に線を引き、その後、票の横軸の権利者の年収額から上方向に線を引きます。

2つの線が交わるところが、義務者が負担すべき養育費の標準的な月額となります。

裁判所ウェブサイト:養育費・婚姻費用算定表

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新しい算定表(日本弁護士連合会)

現在の標準算定方式やそれに基づく算定表の課題や問題については、弁護士や専門家から指摘されていました。

  • 子どもの年齢区分が2区分しかなく生活実態とかけ離れている
  • 職業費が過大に算出されている
  • 住居費、保健医療、保健掛金などを特別経費として総収入から控除すると、父母間の生活水準の格差を固定化する
  • 活用開始から13年以上経過するのに、税制や保険料率の改正などが反映されていない

2016年11月29日、日本弁護士連合会が「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」を最高裁判所長官などに提出し、その中で新しい算定表も発表しています。

日本弁護士連合会の提言の中では、標準的算定方式やそれに基づく算定表について「事案によっては養育費等が義務者の生活水準と比較して著しく低く算定されて、別居世帯やひとり親家庭の貧困の固定につながる一因となっている」、「子どもの養育家庭の実態に即していない」などと指摘されています。

その上で、新しい算定方式がこれらの問題を改善できると主張しています。

新しい算定方式は、年齢区分が細かくなっているところや、養育費の金額が標準的算定方式より高く設定されているところが特徴です。

つまり、新しい算定方式の方が標準的算定方式より高い金額が算出されやすく、権利者には有利ですが、義務者には負担が増えます。

新しい算定方式は、社会に認知されてきた段階であり、家庭裁判所が標準的算定方式による運用をしている状況に変化はありません。

しかし、今後、影響力を高めていく可能性は否定できません。

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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