財産分与(住宅ローン)の調停条項!債務者変更と連帯債務者脱退の文言!

財産分与 住宅ローン

離婚調停で財産分与を取り決める場合に留意すべきことの一つが、調停条項の文言です。

その他の離婚条件と比較すると、財産分与の調停条項はバラエティに富んでおり、合意した内容が正しく反映されているかどうか条項の細かい文言までチェックしなければなりません。

特にややこしいのが、住宅ローンに関する調停条項です。

「裁判官や調停委員がチェックしてくれるから大丈夫だろう。」と思うかもしれませんが、調停委員は法律のプロではなく、家事調停を担当する裁判官は当事者の細かい主張まで全て把握しているわけではありません。

したがって、調停成立前に調停条項案を直に確認し、自分の主張に沿った内容か否かチェックするのが基本です。

住宅ローンに関する調停条項の前提

離婚時の財産分与の対象となる不動産の大半は自宅であり、主な争点の一つが住宅ローンです。

離婚調停では、自宅の住宅ローンについて、債務者を変更するか否か、連帯債務者の一方や連帯保証人を脱退させるか否かなど、夫婦の合意次第で柔軟に調停条項を作成することができます。

しかし注意したいのは、「住宅ローンに関する夫婦の合意は、債権者の金融機関などを一切拘束しない。」ということです。

つまり、夫婦間で「夫婦の一方を連帯債務者から脱退させる」旨の合意ができたとしても、債権者が承諾しない限り、債権者に対する関係には効力が生じません。

したがって、調停条項も「連帯債務者から脱退するように、債権者と交渉することを約束する。」などの文言となります。

債権者との関係でも効力が生じさせるには、事前または事後に債権者と協議して承諾を得る必要があります。

この前提を知らずに財産分与を行うと、離婚後に大きな後悔をすることになりかねません。

例えば、調停で住宅ローンの連帯保証人から脱退する旨の合意をして、離婚と同時に脱退したと安心していたところ、離婚後に債権者から「主債務者が所在不明になったため、代わりに住宅ローンを支払え。」といわれるおそれがあります。

離婚調停で夫婦が合意した住宅ローンに関する事項は、債権者である金融機関などを一切拘束するものではない。

離婚調停で住宅ローンを協議する上で前提となる知識であり、非常に重要なので、覚えておいてください。

財産分与(住宅ローン)の調停条項

前提を踏まえた上で、以下、住宅ローンに関する主な調停条項について解説します。

債務者でない人が財産分与で自宅を取得して住宅ローンを支払う場合

例えば、離婚調停の相手方である夫が住宅ローンの単独債務者で支払いを継続してところ、離婚調停において、申立人である妻が財産分与として自宅を取得して住宅ローンを支払う旨の合意ができた場合、調停条項は以下のようになります。

相手方は、申立人に対し、相手方が平成○○年◯◯月○○日付け金銭消費貸借契約に基づいて○○銀行○○支店から借り受けた債務(債権額○○万円)について、申立人を債務者とするように○○銀行○○支店と交渉することを約束する。

申立人は、相手方に対し、前項の債務について、相手方が債務者から脱退するために○○銀行○○支店と行う交渉及び手続に協力する。

申立人は、相手方に対し、前項記載の○○銀行○○支店に対する借受金債務について、その残額の支払義務を相手方から引継ぎ、平成○○年○○月の支払分から支払うことを約束する。

住宅ローンに関する調停条項の前提で書いたとおり、債務者の変更は債権者が承諾しない限り、何ら効力を生じません。

したがって、調停条項では、債権者である金融機関などとの交渉を行うと記載するにとどめます。

また、債務者の変更については、債権者が、新たに債務者となる予定の人の収入や資産などを審査した上で手続きを行うため、新たに債務者となる予定の人も交渉や手続きに協力する旨を取り決めておきます。

さらに、住宅ローンの支払いを引き継ぐ時期も記載しておくのが一般的です。

なお、自宅の名義を変更する場合は、以下の文言を調停条項に記載します。

相手方は、申立人に対し、別紙物件目録記載の建物について、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きを行う。

債務者でない人が自宅に住み続ける場合

夫婦の収入や資産に格差がある場合などは、離婚後も住宅ローンの債務者でない人が自宅に住み続け、債務者が支払いを継続するという合意をすることがあります。

例えば、相手方が申立人に対して財産分与で自宅を分与し、住宅ローンの支払いは継続する旨の合意ができた場合、以下のような調停条項を作成します。

相手方は、申立人に対し、別紙物件目録記載の建物について、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きを行う。

相手方は、申立人に対し、相手方が平成○○年◯◯月○○日付け金銭消費貸借契約に基づいて○○銀行○○支店から借り受けた債務(債権額○○万円)の支払いについて、相手方が引き続き弁済することを約束する。

夫婦が住宅ローンの連帯債務者の場合

夫婦が住宅ローンの連帯債務者の場合、夫婦の一方が住宅ローンの支払いを引き受け、もう一方が連帯債務者から脱退する旨の合意をするのが一般的です。

例えば、相手方が住宅ローンの支払いを引き受け、申立人を連帯債務者から脱退させる旨の合意ができた場合、以下のような調停条項を作成します。

相手方は、申立人に対し、申立人及び相手方が平成○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約に基づいて○○銀行○○支店から借り受けた債務(債権額○○万円)について、申立人が連帯債務者から脱退するように、○○銀行○○支店と交渉することを約束する。

また、相手方が単独で住宅ローンの支払いを開始する時期についても、調停条項としておきます。

相手方は、申立人に対し、前項(上記調停条項)記載の借入金債務の支払いについて、平成○○年○○月の支払い分から支払うことを約束する。

夫婦の一方が住宅ローンの債務者、もう一方が連帯保証人の場合

住宅ローンを組むときに、夫婦の一方を主債務者、もう一方を連帯保証人として契約を結んだ場合、離婚に伴って連帯保証人を脱退させる合意をすることがあります。

連帯保証人である申立人を脱退させる旨の合意ができた場合の調停条項は、以下のとおりです。

相手方は、申立人に対し、相手方が平成○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約に基づいて○○銀行○○支店から借り受けた債務(債権額○○万円)について、申立人が連帯保証人から脱退するように、○○銀行○○支店と交渉することを約束する。

申立人は、相手方に対し、前項記載の相手方の○○銀行○○支店に対する借受金債務について、相手方が申立人を連帯保証人から脱退させるために○○銀行○○支店と行う交渉及び手続に協力することを約束する。

連帯保証契約は、債権者である金融機関などと連帯保証人の間で結ぶ契約です。

したがって、連帯保証人(上記の例では申立人)の脱退手続きには、相手方が債権者と交渉するだけでは足りず、連帯保証人自身が債権者との間で連帯保証契約を合意解約するなどの必要があります。

そのため、調停条項では、申立人と相手方それぞれが行うことを定めておきます。

なお、単に連帯保証契約を合意解約することは債権者にとってデメリットしかないため、通常は、別の保証人を立てたり自宅に抵当権を設定したりするよう要求されます。

財産分与の調停条項(不動産以外)

住宅ローンに関する調停条項と比較する意味で、離婚調停で財産分与として請求されることが多い預貯金と保険の調停条項についても確認しておきましょう。

預貯金の財産分与の調停条項

財産分与の対象となるのは、原則として、「夫婦が婚姻から別居するまで」に形成した預貯金です。

夫婦の一方が婚姻前に形成した預貯金は「特有財産」なので対象外です。

また、別居後に形成した預貯金は「預貯金の形成に寄与したと主張する前提(同居)」が存在しないため対象外となることが多いです。

相手方は、申立人に対し、本件離婚に伴う財産分与として、○○円を支払う。

相手方は、上記金員を、平成○○年○○月○○日限り、○○銀行○○支店の申立人の普通預金口座(口座番号○○○○○○○)に振り込む方法により支払う。

振込手数料は、相手方の負担とする。

金銭の財産分与の場合、原則として、財産分与の金額、その金額の支払方法、支払期限を調停条項に記載します。

また、振込手数料を負担する人も特定しておきます。

保険の財産分与の調停条項

解約返戻金が発生する契約内容の子どもの学資保険、生命保険、損害保険については、保険そのものに財産的価値があるため財産分与の対象となります。

保険が財産分与の対象となる場合、財産分与として保険を取得する人が、解約返戻金の額と財産分与の割合に応じた金額を相手に支払うのが一般的です。

中途解約すると損が出るため、保険は継続しておくのです。

したがって、調停条項は、解約返戻金預貯金と同様「○○は、○○に対し、本件離婚に伴う財産分与として、○○円を支払う。」などの文言とし、支払方法や支払期限を明記します。

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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