熟年離婚後の生活を後悔しない準備:年金分割や退職金の財産分与など

熟年離婚 準備 離婚届

熟年離婚という言葉が流行して少し経ち、離婚関連ワードとして定着しましたが、熟年離婚がはらむ危険性については十分に広まったとは言えないのが実情です。

熟年離婚は離婚後に後悔しやすい

熟年離婚を希望する人の中には、婚姻中に専業主婦で老後の資金も収入のあてもないのに「年金分割や退職金の財産分与をすれば、離婚しても一人でやっていける。」という離婚後の生活に楽観的な展望を持った人が少なくありません。

しかし、現実はそう甘くありません。

離婚が成立すれば、関係が冷め切った夫とは決別できますが、年金や財産分与で得た退職金を当てにしている場合、離婚後に待っているのは悠々自適とは程遠い生活であることが多く、離婚後に後悔しがちです。

年金分割の誤解

年金分割とは、夫婦の一方または両方が婚姻期間中に納付した厚生年金の保険料について、夫婦が共同で支払ったとみなし、離婚時に夫婦で厚生年金記録を分割する制度です。

年金分割の対象は厚生年金のみ

年金分割の対象は「厚生年金(公務員の旧共済年金も含む)」だけであり、国民年金は対象外です。

例えば、ある人が老後に受け取る年金の月額が25万円の場合、25万円のうち国民年金の部分は差し引かれます。

分割するのは厚生年金記録

また、年金分割という名称から「支払われる年金を分割する制度」だと思われがちですが、分割するのは「夫婦の一方または両方が婚姻期間中に治めた厚生年金保険料の記録」であり、結婚前や離婚後に納めた年金保険料は年金分割の対象外です。

例えば、妻が35歳の時に夫と結婚し、60歳で離婚したとします。

夫が大学を卒業した22歳の頃から就労し、65歳で退職するまで厚生年金保険料を納めていたとしても、妻が年金分割を請求できるのは婚姻期間である35歳から60歳までの25年間だけです。

分割できるのは最大2分の1

厚生年金記録の分割割合は、最大が2分の1です。

具体的な分割割合は、2分の1までの範囲内で夫婦が話し合って決め、合意できない場合は家庭裁判所に年金分割調停または審判を申し立てます。

なお、妻が専業主婦(第3号被保険者)の場合、2008年4月1日以降の厚生年金記録については、請求すれば夫婦の合意がなくても2分の1ずつ分割されます(3号分割)。

夫の年金を半分もらえるわけではない

以上のように、婚姻期間中の厚生年金記録を最大で2分の1ずつ分割するのが年金分割制度であり、夫が受給できる年金を半分受給できるわけではありません。

年金分割によって増える年金受給額は、婚姻期間の長さとその間の平均標準報酬月額によりますが、月額数千円から数万円の増加に過ぎないケースもあります。

関連記事

年金分割とは?離婚時の年金分割は何を分ける?年金制度の基礎から解説

財産分与で得られる退職金の誤解

離婚時の財産分与では、夫の退職金の分与を請求することができます。

しかし、年金分割と同じく「退職金を半分もらえる。」と思っている人が多いですが、必ずしも半分もらえるとは限りません。

退職金が財産分与の対象となる条件

まず、退職金は、必ず財産分与の対象となるわけではありません。

判例を確認すると、退職金が財産分与の対象となるのは、退職金の受給が確定的である場合や、10年以内に退職予定である場合などに限定されています。

退職まで何十年もある場合に退職金を財産分与の対象とすることを認めると、分与する側が、退職金の総額や受給できるかどうかも未確定のまま高額な支払いをすることになるからです。

財産分与の対象となる期間

財産分与として請求できる退職金は、原則として、法律婚の夫婦が同居していた期間に増加した分だけです。

婚姻前に増加した部分や別居後に増加した部分については、夫婦の協力によって増加したとは言えず、対象外とされます。

ただし、別居後については事情が考慮されます。

財産分与を求める側が子どもを監護している場合などは、夫婦の協力があったとみなされて、別居期間に増加した部分も財産分与の対象となることがあります。

夫婦の寄与度

財産分与の割合は、原則として、夫婦が2分の1ずつです。

しかし、夫婦の一方が特殊技能を有し、個人の能力によって財産を増加させたことが明らかな場合は、例外的に2分の1以外の分与となることがあります。

夫の退職金を半分もらえるわけではない

このように、財産分与で必ず退職金が分与の対象となるわけではなく、対象となる場合も、婚姻してから別居するまでに増加した部分について最大2分の1で分割できるに留まり、夫の退職金を半分もらえるわけではありません。

仕事が見つからない

通常は、年齢を重ねるほど、安定した収入が得られるだけの仕事を見つけることも困難になります。

弁護士、看護師、社会福祉士など就職や開業に有利な資格がある場合は別ですが、そうした資格がなく専業主婦期間が長い場合には、離婚後に就職すること自体が難しいこともあります。

たくわえが少なく離婚後に働こうと思っても仕事がなく、経済的に困窮する熟年離婚経験者は後を絶ちません。

住む場所が見つからない

熟年離婚をする場合、住む場所の問題も深刻です。

年齢が高いほど一人で家を借りづらくなりますし、保証人なども見つけにくくなります。

仕事が見つかっていないとなれば、なおさらです。

若い頃なら実家に帰ることもできますが、すでに親が他界していたり実家が残っていなかったりする人もいます。

婚姻中の自宅に住み続けるという選択肢もありますが、住宅ローンが残っていれば負担を求められるおそれがありますし、住宅ローン完済済みでも何らかの負担を求められる可能性があります。

たくわえも収入も少ない場合、公営住宅という選択肢が最も現実的ですが、応募制のため必ず入居できるとは限らず、また、希望した場所とは異なる場所に入居となることも多いものです。

そうなると住み慣れた環境から離れた地で暮らすことになり、心身ともにストレスを抱えてしまうおそれがあります。

熟年離婚後の生活を後悔しないための準備

熟年離婚後の生活を後悔しないためには、離婚前に十分な準備をしておく必要があります。

離婚条件を決めておく

離婚時には、離婚することだけでなく、離婚の条件についても夫婦間で話し合って決める必要があり、夫婦で合意できない場合は離婚調停や離婚訴訟で解決を目指します。

熟年離婚の場合、既に子どもが成熟していることが多いため親権者、養育費、面会交流が問題になるケースは多くありません。

一方で、離婚時の金銭に関する取決めが老後の生活水準に直結するため、財産分与と年金分割、場合によっては慰謝料などの金銭給付をめぐって激しく対立する傾向があります。

そのため、離婚を切り出す前に自分の頭の中で離婚条件を詳細に整理し、絶対に譲れない一線や譲歩できる範囲まで考えた上で、離婚の話し合いに臨むことが大切です。

財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた共有財産について、離婚時に生産して夫と妻の個人財産にする手続です。

共有財産には、預貯金、不動産、有価証券、自動車、保険など様々な財産が含まれますが、名義に関わらず夫婦が婚姻中に築いた財産であれば共有財産として財産分与の対象です。

分与の割合は、一部の例外はありますが、夫婦の共有財産を夫と妻で2分の1ずつが原則です。

たくわえが少なく安定した収入が得られる仕事もない場合、財産分与で分与された財産が離婚後の生活を支える糧となるため、夫婦の共有財産を正確に調べて分与を求めることが重要です。

対象財産が複雑多岐にわたる場合、財産目録を作成し、自分がどの財産をどれくらい分与してもらいたいかについて書き加えておくと、自分の中で主張が整理できますし、相手にも伝わりやすいです。

また、退職金の分与を希望する場合、分与の対象となる範囲を特定し、分与の割合や具体的な金額を試算しておくと、話し合いがスムースに進みやすいでしょう。

年金分割

年金分割については、地域の年金事務所や年金相談センターなどで年金分割のための情報通知書を取得し、分割の対象となる合意分割の割合をいくらにするのか(最大2分の1)、3号分割機関の請求をするのかについて検討します。

熟年離婚の場合、婚姻期間が長く、若くして離婚する夫婦と比較して分割する厚生年金記録が多くなる傾向があります。

「夫の年金を半分もらう。」とまではいきませんが、多少であっても将来受給できる年金額が増えることになるため、忘れず主張してください。

慰謝料

浮気などで婚姻の破綻原因を作った配偶者に対しては、慰謝料を請求することができます。

慰謝料の根拠となる事実があり、その事実を裏づける客観的な資料が揃っていれば、以下のような金額の慰謝料が認められることがあります。

慰謝料請求の根拠 慰謝料の相場
浮気・不倫(不貞行為) 50~300万円
悪意の遺棄 50~200万円
DV 50~500万円
モラハラ 50~300万円

離婚裁判などで慰謝料を請求する場合、客観的資料の内容や程度によって慰謝料が認められるか否かが決まるため、離婚前から慰謝料請求の根拠となる資料を集めておくことが大切です。

熟年離婚後の仕事を見つけておく

離婚後は夫婦が他人同士になり、互いに相手を頼ることなく自分で働いて生活しなくてはなりません。

長年専業主婦として配偶者を支えてきたとしても、就労経験が一切ないとしても同じです。

熟年離婚するなら、「配偶者に頼らず、自分で仕事をして生活を成り立たせる。」という覚悟が必要です。

離婚を切り出してから求職活動を始めるのは心身ともに負担が大きく、離婚紛争も仕事も中途半端になるおそれがあるため、離婚紛争が始まる前に仕事を探し、可能であれば、就職して仕事に慣れた後で離婚の話し合いを始めてください。

また、離婚の話し合いを始めたときに無職の場合は、離婚後に落ち着いてから求職活動を始めることを検討します。

当面は貯金を切り崩す厳しい生活になることが予想されますが、離婚問題で疲弊した状態で求職活動をしても身が入りませんし、就職できたとしても、離婚問題解決と職場適応を同時にこなさなくてはならず、心と身体に大きな負担がかかってしまうからです。

熟年離婚後の住まいを決めておく

離婚する前に、離婚後の住まいを決めておくことも大切です。

「住む場所が見つからない」の項目でも解説したとおり、熟年離婚した人が選択できる住まいは実家、婚姻中の自宅、賃貸住宅、公営住宅などですが、いずれもリスクやデメリットがあります。

そのため、離婚前から住む場所を探し、離婚後も住み続けられる住まいを見つけておくことが大切です。

例えば、離婚前に新居を借りて別居しておく方法があります。

夫婦関係が悪化したとはいえ婚姻関係は継続しており、離婚後と比較すると住まいを借りやすいですし、離婚までの期間に新しい環境での生活に慣れることもできます。

離婚後に経済的に苦しくなると予想される場合は、離婚前に別居した上で公営住宅に応募しておくことも考えられます。

離婚後の家計を黒字にできるよう調整する

通常、熟年離婚に限らず、婚姻中に専業主婦であった人は離婚すると生活水準が下がります。

夫の収入を頼れなくなる上、就職に役立つ資格や経験がない限り、夫と同程度またはそれ以上の収入が得られる仕事に就くことは困難だからです。

そのため、離婚後は婚姻時より収入が減少する前提で、婚姻中から不必要な支出を極力減らす努力をしておくことが大切です。

就労して収入が得られるようになったら、不必要な支出を減らした結果と突き合わせ、赤字になるようなら改めて支出を減らす工夫をしなければなりません。

支援制度を調べておく

日本では、婚姻した夫婦の3分の1が離婚すると言われるほど離婚が増え、離婚後に生活が困窮する人も増えており、行政が離婚した人の生活を支えるための各種制度を整備しています。

しかし、地域によって支援制度や内容が異なる、所得制限がある、母子家庭に限るなどの条件があります。

そのため、自分がどの制度を利用できるのかについて離婚前に確認し、離婚後の生活をイメージしておくとともに、離婚後すぐに申請する準備をしておくことが大切です。

離婚後に利用できる主な制度は、以下のとおりです。

  • 国民健康保険料の減免
  • 国民年金保険料の免除
  • 住民税の免除(非課税)
  • 所得税の免除
  • 公共交通機関の割引
  • 上下水道料金の減免
  • 粗大ごみの手数料の減免
  • 寡婦控除

※2019年2月9日時点で、離婚ハンドブック編集部が把握しているもの

他にも独自の支援制度を整備している自治体もあるため、住んでいる地域の担当課(名称は地域で異なる)で相談してみてください。

なお、離婚後の生活に困窮して立ち行かなくなった場合には、生活保護を受給する方法もあります。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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